ギターケースの少女
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頭を抱えるハルトに、まどかが声をかけた。
「その、この近くに有名なアイス屋があるんです。私が出しますので、よかったら、そこに行きませんか?」
「え? ……それって、大人が女子中学生に奢ってもらうことに……」
「……そ、それは気にしない方が……」
まどかが頬をかく。
だが、空腹が我慢できなくなったハルトは、首を縦に振るほかなかった。
老舗街の一角。そこに、まどかの目的地があった。
彼女曰く、何度もテレビで紹介されている店らしい。来る途中にすれ違った、まどかの同級生らしき少女たちが談笑しながらアイスを頬張っているのを見て、ハルトも頷く。
「なんか、甘いものって、ドーナツ以外だと久しぶり」
「期待していてください。後悔はさせません」
まどかが案内してくれたのは、それほど華があるわけではない、アイス屋だった。
「ここのチョコミントアイスが、もう美味しいって評判なんですよ。私の友達から聞いた話ですけど」
「へえ。すごいなあ……チョコミント?」
ハルトは、話の流れに疑問符を浮かべた。
ハルトの記憶の中から、緑色の氷菓子にチョコをまぶした物が思い出された。
「あれって、ちょっと歯磨き粉みたいじゃない? なんか、爽やかすぎて変な味じゃない?」
「そんなことないですよ? さやかちゃん……私の友達も結構おいしいって言ってましたし」
「へえ……チョコミントねえ……今時の若者は変わってるんだね」
「ハルトさんだって私とそんなに都市変わらないじゃないですか。……あ」
お店のショーウィンドウで、まどかは足を止めた。
冷凍保存されているカップアイス。棚に無数に並んでいたものなのだろう。すでに放課後の時間。数多くの学生たちによって食い散らかされてしまったのか、一個しか残っていなかった。
「うーん……これは半分こですね」
「いや、俺は……」
「いいですから。ハルトさんの誤解も解かないと。ちょっと待っててください」
にっこりと笑むまどかは、そそくさと急ぎ足でカウンターへ行く。
「「これください?」」
まどかの声が、誰かと重なる。
同じものへ向かう指が二本。
まどかの反対側に、ちょうど同じものを指す少女がいた。
ショートカットの髪をまとめる黒いリボン。黒い上着の下から断片的に見えるピンクのセーラー服はこの辺りでは見かけないもので、その明るい顔には、困惑の表情を浮かべていた。その肩には黒いギターケースが背負われており、軽音楽部の帰りの学生のようだった。
「あ、あれ?」
少女は少し困ったように、こちらを見る。
「あ、ああ……ごめんなさい。ど、どうぞ」
「あ、いえ、こちらこそ。どうぞ」
最後の一個を前に、互いに譲り合う
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