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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十二話 旧友、二人 (上)
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た呟きを新城は聞こえない振りをする。
「義兄上は最初、駒州の後備に送るつもりだったからな。
貴様の次は実仁親王殿下か。貴様は信用できると思うか?」
 ――何もかもが政治に結びつけられる。将家も皇家も相手を貶め権力を握る機会程度にしか思っていないのだろう。
新城の鬱屈とした思索は、刹那あの奏上に並んでいた守原達の記憶を掘り出す、
度し難い破壊衝動が腹の底を衝いた。

「駒城が求めている物は取り纏めの為の皇家の権威、実仁親王殿下は駒城の政治力と近衛の充足に必要な軍への影響力、上手く分担されている間――おい、どうした?」

「――何でもない。それで貴様は如何に推測したのだ?」

「如何にもも タコにもも ないよ。大外れさ。自分ではどう思っていても所詮は二十六の餓鬼だってことだ」
不貞腐れた様に長椅子にそっくり返る姿を見て新城は溜息をもらした。
――貴様は子供か。
「拗ねるな、それはそれで面白そうだし話せよ」

「――自分の失敗を好き好んで解説する趣味は俺には無いよ」

「解説も長広舌も貴様の趣味だろうが、付き合ってやるから話せ」
新城は拗ねた旧友を鼻で笑う。

「・・・・・・本当に素敵な性格だよ、お前」
 毒づきながらも立ち上がるその姿は溌剌としていた。
「さて――」
説明を始める時の決まり文句を云う姿はやはり楽しんでいるように見えた。

「短く済ませろよ」
新城の茶々を黙殺して豊久は朗々と語り始めた。

「第一に、襟裏の意志統一は親王殿下が行うと思っていた。殿下は俺達――駒城に借りがあるからな。大殿や若殿の意見に陛下が同意の感想をお示しになるだけでも威力は十分ある。」
そう広くはない書斎を一周し、人差し指を伸ばす。
「第二に軍監本部内での総反攻に賛成する意見が予想以上に小さかった。
俺は参謀達がもう少し主家に盲目であると思っていた、窪岡少将達が取り纏めにかかる時にお前を使うと思っていた」

「――そして、第三に――近衛衆兵に剣虎兵を持つことができると思わなかった。
というよりも想定してなかったんだ。考えてみればあの親王殿下なら騎兵代わりにと考えてもおかしくないのだがな――まだまだ、視野が狭いよ」
――成程、こいつは北領でも第五旅団を邏卒扱いしていた。最初から近衛衆兵をまともな軍隊とは思っていなかったわけだ。

「これが俺の読み違えだ――面白かったかい?」
説明を終えると豊久は居心地悪そうに長椅子へ体を沈める。
「――教師にでもなってれば受けが良かっただろうな。それにしても軍監本部か。貴様の予想があたっても結局、嫌なところに送られるのだな」

「おい、いっておくが本部の勤務室は快適だぞ?」
苦笑を浮かべた元本部員が抗議する。

「問題はその快適な場所に居る連中だ、お前の同族で
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