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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十二話 旧友、二人 (上)
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に准将――いや、少将閣下だ。まぁ此処まで露骨な人も珍しいが似たような例は見回せば何処にでもある――例えば自分自身か。
  自嘲の笑みを浮かべながら次のものへと手をつける。
「此方は……益満昌紀大佐からか。」
 益満家は駒城の家臣団筆頭の家である、駒城軍参謀長が内定している益満淳紀少将が当主であり昌紀大佐はその息子にあたる。
 現在は将家とその領民達で編成された二個連隊と司令部から成る総勢三千名の近衛唯一の騎兵部隊――計算が合わないのは近衛の見栄が原因である。
その首席幕僚を勤めている。
 彼は其処で家柄に恥じぬ武勲を上げ、三十三でその地位に就いた。
竹を割ったような性格に優秀な騎兵上がりの参謀と公私共に父に生き写しだと言われている。
「駒州兵理研究会の食事会(さかもり)か。まぁ出ないわけにはいかないな」
 昌紀大佐は若手の陪臣を集めて兵理研究会を運営している、会の開催は年に数回程だが駒州は勿論、軍監本部、皇州都護、龍州等の各鎮台に近衛禁士、衆兵、そして水軍、と彼方此方から人が集まり、見聞を広めるには調度良い、と、結構な人数が集まり酒杯を片手に親睦を深めている。
 ――もちろん、本来の目的自体も忘れてはいない筈だ。多分、きっと、おそらくだけれど。
毎度後処理を行っている素面組である豊久は何時もの惨状を思い出し、頬を伝う汗を拭った
 ――下戸組の俺はまた後始末か?
などとぼやきながらも豊久は気が晴れる予定が入ったことで気をとりなおし、残りの束へと手を伸ばした。



最後の一通に手を伸ばす。
「これは――堂賀閣下からか。」
 豊久が大尉となった時に二年ほどつかえた上司からである。首席監察官附の副官として当時は大佐だった堂賀の下に任じられ、彼に気に入られたことで彼の異動に連れられて軍監本部で防諜室の末席に就く事になった。
現在は情報課次長の准将と順調に出世をしている。親駒城派と言われているが、守原寄りの中立とみなされている元坊主の執政・利賀元正とも親しく、一歩間違えれば危険な綱渡りをこなし、絶妙な立ち位置を維持しつつ軍監本部の要職に登り詰めたやり手の情報将校である。
 さて今度は何を企んでいるのかと封を切ろうとすると、柚木がノックをして豊久に友人の来訪を告げた。
「若様、育預殿がいらっしゃいました」

「分かった。喫煙室へ丁重にお通ししてくれ」
 ――あれでも便宜上は我が主家の末弟である。恩義がある元上司とは言え手紙は後にしよう。
未読の手紙を置き客人の出迎えへと向かう、その顔には不敵な笑みが張り付いていた。
 ――さて、お客様方は何名のお越しかな?


同日 午前第十刻半 馬堂家上屋敷 喫煙室
駒城家御育預 新城直衛

 ――釈然としない。
自分を先導する馬堂家・家令頭の辺里の背中を眺め
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