第6話『影』
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落ついた輝橋は嫌なものはさっさと片付けてしまい、玲人にゲームのコントローラーを投げ渡してくる。
「風呂組が帰ってくるまでまだかかんだろ。 付き合えよ」
「……お手柔らかに頼むよ」
コントローラーを受け取り、キャラクターを選択しようとした、その時。
「キャアアアアアアアアアァァァァ!!」
「なっ!?」
布を裂くような悲鳴が響く。 この声は……
「菜穂ちゃん!?」
考えるより先に体が動いていた。 いずもを飛び出し、暗くなった山道を駆ける。
一体、何が……
??????????
「おっ風呂〜おっ風呂〜」
飛鳥さんの歌が静かな山道に響く。
「随分と上機嫌だな?」
「そりゃこんな大人数でお風呂なんて滅多にありませんからね〜! テンション上がりまくりですよ!」
確かに大人数。 私を含めて合計6人でお風呂に向かっている。 正確には男女で別れるので立石先輩だけは一人になるんだけど。
「けど本当にいいんですか? 私が着替え取りに戻るのについてきて貰っちゃって……」
「いーのいーの! ねっ、ギバちゃんセーンセ?」
「まぁ、玲人にあんなこと言っておきながら自分が実行しないわけにもいかないからな。 あとちゃんと“柳葉先生”と呼べ」
「はいは〜い。 柳葉センセ」
それにしても、やけに飛鳥さんの口数が多い。 元々賑やかな人だっていうのは身に染みてわかっているけど、まるで会話が途切れるのを嫌がっているような……
ふとその時、強めの風が木々をざわめかせた。 あたりはすっかり暗くなっていて、静かな山中ということもあって妙に不気味な雰囲気がある。
「ヒッ……!」
「わっ、とと。 飛鳥、大丈夫?」
つい数秒前まで楽しそうに話をしていた飛鳥さんが小さくなって立石先輩に抱きつく。 その体は小さく小刻みに震えていた。
その様子を見て、菜穂ちゃんが悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「もしかして、飛鳥さん怖いんですかぁ?」
「そ、そんなことないし! これくらい平気だし!」
「あ、待ってよ飛鳥」
顔を赤くした飛鳥さんが早足で先に行ってしまう。 新しいおもちゃを見つけたような顔をした菜穂ちゃんが話を続ける。
「そういえば、この辺の森にはちょっとした怪談があるんですよ。 気になります?」
「気にならないし!」
「まぁまぁ、たいした話じゃないですよ。 よくある夜の森には化け物が出る〜って」
「化け物?」
「はい。 私が聞いた話ではゾンビみたいな侍が出るって。 けどここに住んでしばらく経つけど見たことないんですよね〜。 やっぱり作り話だと思いますよ」
「ふーん……」
少し進んだところで立石先輩が立ち止まる。 何やら妙に鋭い視線で森の奥を睨ん
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