第六十話 ハルケギニア大寒波
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
が栄養価も高い素晴らしい作物だ。今、ハルケギニアで育てても寒波の間は効果的な作付けは出来ないと思うが、その辺は上手くやってくれ。兎も角、素晴らしい作物だ、大事な事だから二度言ったぞ」
「御意」
種芋用と救援物資用の二種類のジャガイモを受け取った連絡員は、深々と頭を垂れた。
マクシミリアンは、水魔法でジャガイモの品種改良を進めていたが、本国の危機を聞いてGOサインを出した。
(本音は、もっと時間を掛けて品種改良をしたかったが……仕方が無い)
こうして、ハルケギニアにもたらされた他の救援物資に混じってジャガイモは、トリステイン各地で栽培されるようになった。
マクシミリアンは新世界の事を世間に公表せず、ジャガイモはマクシミリアンの水魔法で作り出した作物としてトリステインに送られる事になった。
しかし、ジャガイモは当初、その不恰好な形が仇となって民衆には好まれなかった。だが意外な形で人々に受け入れられ民衆に親しまれるようになる。
☆ ☆ ☆
大寒波がハルゲギニアを襲い、一ヶ月が経った。
トリステイン王国では、エドゥアール王の命令で各所に風雪が凌げる避難所を設置され、温かい炊き出しが振舞われた。
これによって、大寒波で家を失った者はもちろんの事、今日の糧をすらも事欠く貧しい者たちも衣食住を得ることが出来た。
また、今年分の納税も特別に免除され、民衆はエドゥアール王の温情に大いに感謝した。
雲の切れ間から数日振りに日の光が差す王都トリスタニアは、一面の銀世界で市民達が雪かき雪下ろしに負われていた。
新宮殿の敷地内でも避難所が設置され、王太子妃カトレアが虚無の曜日の休みを利用して魔法学院から応援に駆けつけていた。
「皆さん、列を作って並んで下さいね」
と、カトレアは麦粥をよそって手渡ししていた。
王太子妃自らが配膳をする行為に、場は騒然となった。
当然ながら王太子妃が直接麦粥を平民に渡す事に、異議を唱える者が出た。
こういった『うるさ型』の家臣は未だに多く、マクシミリアンも辟易していた。
「王太子妃殿下、どうかお考え直しください。王族は給仕ではないのですぞ!」
と、カトレアに考え直す事を求めた。
だが、カトレアは……
「お黙りなさい」
と、にっこり笑って突っぱねた。
顔は笑ってはいるが目が笑ってなかった事と、反論の余地を挟ませない有無を言わさぬ物言いに、『うるさ型』の家臣達は黙り込んでしまった。
そういう事もあって、誰もカトレアのする事に口出しする者は居ない。
「ありがたや、ありがたや」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ