中編
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つけ込んだのかも。」
「・・・だとしたら・・・」
ふいに荒垣が立ち上がった。
「一番触れちゃいけない傷をえぐるような仕打ちだ。俺が絶対に許さねえ。」
彼は厳しい表情を浮かべ、吐き出すようにそう言った。
(美紀にゼリーでも買ってこよう。)
真田は財布を持ち、上着を羽織ると、薄暗い廊下に出た。
(シンジがいれば声をかけて一緒に行くか・・・)
そう思ったところで、デジャブに襲われた。
(確かシンジと買い物に出て・・・)
(ゼリーでも買ってこようって言って・・・・・)
(それで・・・その後この孤児院は・・・・・・・・・)
火事だ!
火事で、美紀が!!!
真田はその場に凍り付いた。突然蘇ったその記憶に衝撃を受け、たまらずに部屋に取って返した。乱暴にドアを開けて部屋に入ると、美紀がベッドから出て、ダルマストーブに火をつけようとしているところだった。
「美紀、下がれ!」
思わず怒鳴りつける。美紀はびっくりしたようにストーブから離れた。
「ストーブをつけようとしたのか。それで火事になったのか?」
真田は美紀に歩み寄ると、厳しい口調で問い詰めた。
「火事?何を言っているの?」
美紀が困惑したように聞き返す。
「火事だ。俺が買い物に行っている間に孤児院が火事になって、それでお前は逃げられずに・・・。」
自分でも支離滅裂なことを言っていると思った。しかし止まらなかった。
「火事なんて、まだ起きてないよ。」
真田の剣幕に、美紀は身をすくめて怯えた表情で必死に答える。
「まだ?」
その言葉に引っかかって真田が訊き返した。美紀があっと口を開けた。失言だったようだ。
「まだってことは・・・つまり、これから起きるんだな。」
真田が絞り出すような声で尋ねた。
「そうだね。」
急に無表情になった美紀が、ぽつりとそう言う。
しばし、沈黙が訪れた。
そして真田が重い口を開く。
「お前、本当に美紀なのか?」
違和感がどんどん増していく。
しばらく黙ってうつむいていた美紀が、不意に顔を上げた。
「うーん。ある意味、そうかな。」
唐突に美紀は、にかっと笑った。先ほどまでの具合悪そうな様子は微塵もない。まるで別人のようだ。
真田はその表情に、誰かを思い出しかけた。
「ある意味?・・・どういうことだ。」
「そうねえ。たとえば、・・・。前にお兄ちゃんが迷子を保護して警察に連れて行って、そのお母さんからお礼にシュークリームを貰ったことがあるでしょ。 孤児院のみんなで分ける数はないからって、夜にこっそり二人で食べたよね。みんなには内緒だよって言って・・・。誰も知らない二人だけの秘密。それを知っているんだから、私は美紀だっていう証明にならない? 」
「確かに・・・。」
すっかり忘れていたが、そういえばそんなことがあっ
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