中編
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ん。」と『彼女』が にかっと笑って答える。
「・・・ったく。」荒垣は苦笑して、『彼女』のその笑顔を見つめた。
食べ終えて一息ついたところで、『彼女』が荒垣に問いかけた。
「美紀さんって、真田さんの妹さん。荒垣さんもよく知っているんですよね。」
「まあ、ガキの頃はあいつと美紀と、いつも3人でいたからな。俺にとっても妹みたいなもんだった。」
荒垣は少し表情を硬くして答える。
「火事で亡くなったって聞きました。」
荒垣はジロッと『彼女』の顔を見た。普通の人なら身がすくむような目つきだが、『彼女』は動じずに真剣な表情で見返してくる。
荒垣は軽くため息をついて語り出した。
「あいつが真田の家に引き取られる直前の事だった。あの時、美紀は風邪をひいて一人で寝込んでいた。出火原因はストーブだったそうだ。寒い日だったからな。もしかすると美紀が自分で火をつけようとしたのかもしれないが、そこははっきりわかっていない。古い木造だったんで、あっという間に燃え広がったらしい。孤児院の先生が気が付いた時には、もうあたり一面 火の海だったそうだ。被害者が美紀一人で済んだのが奇跡みたいなもんさ。」
そこで、荒垣はコップに水をつぎ足し、一気に飲み干した。そして口を拭うと後を続けた。
「俺はアキと一緒に買い物に出ていた。具合が悪くて食欲のない美紀に、ゼリーかプリンでも買ってこようとしていたんだ。騒ぎに気が付いて慌てて戻ったときには、孤児院は炎に包まれていて、もうどうにもならない状態だった。」
荒垣は辛そうに眉をひそめ、息を吐いた。
「たった一人の血のつながった家族。真田さん辛かったでしょうね。」
『彼女』も深刻な表情を浮かべてそう言った。
「しばらくはひどい状態だったよ。もし自分が外に出ないで美紀のそばにいたらって言ってな。俺はなんとかあいつを元気づけようとしたが、本当はどうしてやったらいいのかまったくわからなかった。ただ、あいつのそばにいないとダメだと思って、ひたすら声をかけ続けた。
しばらくして、あいつにようやく気力が戻ってきてからは、・・・あれだ。取りつかれたように体を鍛え、強くなることを目指し始めた。大切な人を二度と失わないためだと言ってな。それだけがあいつの心の支えになったんだろう。」
『彼女』は荒垣の話を聞いて、他の人とは比べ物にならない「真田との強い絆」を感じた。
「人を守るために強くなること。それはあいつが自分に果たした『業』みたいなもんだ。」
荒垣の言葉に『彼女』は静かにうなずいた。
「真田さん・・・タルタロスで戦闘中に、なぜ美紀さんの名前を呼んだんでしょうね。」
「さあな・・・何かを見たのか、聞いたのか・・・」荒垣がぽつりとそう言った。
『彼女』はテオドアのいう「敵」のことを思い浮かべた。
「もしかしたら、何かが真田さんの心の傷に
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