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ペルソナ3 幻影少女
前編
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く声をもらした。
「お兄ちゃん。」
美紀はにっこりと笑った。
真田はこみ上げてくる涙を押さえこんだ。駆け寄って、抱きしめたいという衝動に駆られた。しかし、それでも踏みとどまった。
(美紀のはずがない。)
そう、美紀は死んだのだ。
息を整え、「お前は誰だ。」と抑えた声で問いかける。
「ひどーい。何言ってるの。美紀だよ。」
美紀が口を尖らせて言う。記憶のままの表情で・・・。
「美紀は死んだ。孤児院の火事で。9年も前のことだ。死んだときのままの姿でいるわけがないだろう。」
「9年前? じゃあお兄ちゃんは今 18歳ってこと?とてもそうは見えないよ。」
美紀が笑う。
「どうみても小学4年生。」
(何を言って・・・)と思って、ふと気づいた。
美紀の見え方が昔の記憶のままなのだ。高校生が小学生を見下ろすような感じではない。慌てて玄関わきの姿見を覗き込むと、そこに移っていたのは小学4年生の頃の真田の姿だった。着古した服を身に着けて、ぼさぼさの頭をした気の強そうな男の子。
「これは・・・」
思わず鏡を凝視する。
(おかしい・・・。)
しかしその姿を見ているうちに、どこがおかしいのかがわからなくなっていた。どう見ても自分の姿だ。それでも何かが間違っているという気がしてならなかった。
「どうしたの〜、自分の姿にみとれちゃって・・・」
美紀がおかしそうにくすくすと笑った。
「いや、そんなんじゃない・・・。鏡に映った姿が、なんというか、違和感があって・・・」
「先輩ってけっこうナルシストですよね。」
「馬鹿を言うな。」
真田は赤面して鏡から目を離した。からかわれたと思った。
そして、そこでまた違和感を感じる。
「先輩? 今、先輩って言わなかったか?」
「何言ってるの、お兄ちゃん。さっきからおかしいよ。」
美紀が少し心配そうに眉をひそめる。
違和感が離れない。しかしその正体を探ろうとしても、考えれば考えるほどわからなくなってくる。
美紀は引っ込み思案で控えめな子だった。目の前の美紀はなぜか活発で明るい雰囲気をまとっている。
何かが違う・・・。でも、その正体がわからない。
「ねえ。お兄ちゃん、お部屋に行こうよ。」
美紀が近づいてきて真田の手を取ると、建物の奥へとその手を引いた。

「みき・・・だと。」
荒垣は驚きの表情を浮かべた。
寮のホールにはメンバー全員が揃っていて、タルタロスで消えた真田のことを話し合っていた。
もう深夜2時を過ぎている。時計が時を刻む音が、妙に大きく響く。
「ええ、真田さんが消える直前に、そんな風に言ってました。意味は解らなかったけど、人の名前かなって・・・」
『彼女』が自信なさげに言う。
「美紀はあいつの妹の名だ。」
荒垣が難しい顔をして腕を組むとそう答えた。
「えっ! あの、
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