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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第48話 帰還
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が短気なのは、十分マーロヴィアで学んだと思うがね」
「「了解しました。モンシャルマン大佐」」
 俺とファイフェルは席から立ち上がり、大佐に敬礼すると大佐も完璧な答礼してから、俺達に背を向けてカフェの出口へと向かっていった。

 恐らくその独立部隊は功績を上げて順次拡大され、将来の第五艦隊の基幹部隊となる。いよいよ俺も本格的に帝国軍と血で血を洗う戦場へでることになるのだ。空港でこっそり同送名簿を確認した時、同期四五三六名のうち、三二五名の名前が赤字に変わっていた。俺が三二六番目になるとも限らない。二期下のファイフェルはどう思っているのだろう。俺がファイフェルの方へ顔を向けると、ファイフェルの方も同じように俺を見ていた。

「……今の大佐の様子ですと、またご一緒できそうですね。よろしくお願いします」
「あぁ、話の分かる後輩がいるというのは、結構やりやすくていい」
「老人介護どころかこちらがカウンセリングしてもらいたいくらい元気な司令官ですから困ったものです」
「俺の口止め料は些か値が張るぞ」

 俺はそう言うと、ファイフェルの右手をきつくシバキ上げるのだった。


 統合作戦本部地下の駅で右手をブラつかせながら左手で荷物を引きずるファイフェルと別れ、俺は地下高速リニアを一回乗り継ぎ、最寄駅から約一キロの街路を進んだ。地球時代と変わらない欅が道の両側に植えられ、落葉してはいるが大きく枝を伸ばしたその姿は圧倒的だった。少将以上の高級軍人の家族が住む『ゴールデンブリッジ』街一二番地。俺はフェザーン出立以来二年半ぶりに戻ってきた。

 社会システムが健全に作動しているというべきか、それとも高級軍人には特別な配慮が与えられるのか、どちらかはわからないが、街路にはゴミが一つも落ちてはおらず、消火栓には錆一つない。そんな冬の夕焼けに長く影を伸ばしている街灯の根元に、アントニナは立っていた。
 フェザーンに出立する前には肩口までしかなかったストレートの金髪は腰よりも下まで伸び、顔を構成する部位からは幼さが駆逐されている。グレゴリー叔父そっくりの温和なようで切れ味のある鋭い眼差し、レーナ叔母さん譲りの女性としては平均より高い身長。ダウンジャケットの上からでもわかるメリハリの付いた上半身に、ぴっちりとしたジーンズに包まれた引き締まった長い足は一五歳のものとは思えない。

「兄ちゃん。お帰り」
「あぁ、ただいまアントニナ。もしかしてずっと待っててくれたのか?」
「まさか。キャゼルヌ中佐から一時間前にヴィジホンで連絡があったんだよ。統合作戦本部で捕まえようとしたのにいつの間にかいなくなってたって。もしかしたら女連れかもしれないから気を付けろとか言ってた」
「あの野郎……」
「そんな器用な真似ができるなら、マーロヴィアに左遷されるようなヘマは
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