第48話 帰還
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ック司令の方だ」
残念ながら栗毛の三つ編みではなかったが、同じくらい若い女性の給仕が持ってきたコーヒーにクリームを入れ慎重にかき回すモンシャルマン大佐は、俺とファイフェルだけに聞こえるような低く小さい声でそう言った。
「人事異動の季節だから仕方ないが、前任が防衛司令官なのに待命期間もなく宇宙艦隊司令部に急ぎ呼ばれるというのはあまりいい傾向ではない」
「ですが査問とか、そういうわけではないのでしょう?」
ファイフェルの質問にモンシャルマン大佐は小さく頷いたが、その顔色はさえない。
「罰するというわけではない。これは私の勝手な推測ではあるがビュコック司令は独立部隊の指揮官に任命されると思う」
「准将で独立部隊となると、一〇〇〇隻以下。恐らく六〇〇ないし七〇〇隻前後の機動集団というところでしょうか?」
俺が査閲部時代の記憶を基に応えると、大佐も先程と同じように小さく頷く。
「で、あれば問題というわけではないとは思いませんが?」
「……ボロディン大尉らしくないな。この時期に独立機動集団を新編成するとしたら、その目的地はどこになる?」
「あぁ……なるほど」
「もしかしてエル・ファシル星域への即時投入なんですか?」
「そうだ。ファイフェル中尉。そしてだ、ビュコック司令が機動集団の指揮官になられた場合、その幕僚は?」
「まさか私達なんですか?」
ハイネセンに戻ると分かってからというもの、顔色が飛躍的に良くなっていたファイフェルの声は完全に震えている。士官学校を卒業してすぐにマーロヴィアというド辺境、そして短期で頑固で皮肉屋で癖の強い上司という罰ゲームに近い赴任先からようやく逃れたというのにまたなのかという絶望感……原作を知る俺としてはスーパー勝ち組だと思うし、ファイフェルにとってはかなり理想の上司ではないかと俺は思うのだが。
「ビュコック司令と私は結構長い付き合いでね。あの方は上司として硬軟織り交ぜて人の能力を存分に引き出し活用することができる人だ。バグダッシュ・コクラン両大尉は専門分野におけるプロフェッショナルだが、ボロディン大尉もファイフェル中尉も、私が過去知っている司令の補佐役の中では最上位の部類。自分が部隊指揮官になった時、二人が待命状態であれば扱き……いや活躍できる場を作ろうと考えるだろう」
大佐の舌が本音を滑らせたのは間違いない。ビュコックの爺様もめんどくさがり屋ではないだろうが、自分の権威が人事部にどれだけ通用するかということはわかっているだろうし、直近で能力を把握している部下を継続して確保したいのは、上官としては当然のことだ。
「人事部から横やりがなければ参謀長は私か、あるいはオスマンという大佐だろうと思う。そういうわけで、二人にはなるべくハイネセンから離れないでおいてもらいたい。あのお方
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