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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第48話 帰還
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は中央航路から離れておりますが、それは同時に帝国軍の脅威からも遠く離れているとも言えます」
「海賊さえ対処できれば、十分安全圏というわけね。」
「マーロヴィア星域はまだ先に多くの未開拓宙域があります。一〇〇年前、辺境開拓重要拠点に指定されて以降、まったく開発されていません」
「先立つモノがなかったでしょう。今の一番の問題は人口で……そういうこと」
「強制は無理でしょうが、食料と産業の芽があれば移住してもいいと思う物好きが、一%くらいいるんじゃないかと思います」
「約三万人、ね。現在の食料生産能力から考えればもう少し余裕があるわ」

 あとはしっかりと海賊の発生を阻止すること。除草剤を蒔くレベルで掃討したつもりだから、リバモア准将がよほどのヘマをしない限り、一年程度は治安に余裕がある。それに綱紀粛正が行われた治安組織も失点を取り戻すために躍起になるだろう。文明の発展を陰から支えてきた『役人』というプロフェッショナルの意地とプライドを見せてもらいたい。言外の視線に納得した表情を浮かべた女史は、ソファから立ち上がり俺に手を差し伸べた。俺も立ち上がってその細い手を握りしめる。

「あなた方のマーロヴィアに対する絶大な献身に敬意を」
「ありがとうございます。長官閣下にはこれからもご苦労が絶えないと思いますが、どうかご壮健で」
「これでもキャリア官僚の端くれ。失敗と労苦は、成功への礎だと学んでいるつもりよ」
「ちなみに、どんな失敗をされたんです? ハイネセンで」
「……胸と服の隙間に手を突っ込んだ上司を後ろ回し蹴りで壁に叩きつけただけよ。腰骨折るくらいにねっ!」

 そういうと女史は俺の手を潰さんばかりに握りしめるのだった。



 宇宙歴七八九年の新年は、タッシリ星域パラス星系で爺様達と一緒に迎えることになった。ヤンがエコニアからハイネセンに戻る際、二〇日以上かかったのと同じエラーに巻き込まれたわけで、こればっかりはしょうがない。
 
 それからロフォーテン星域でかろうじてハイネセン行きの軍事直行便を確保し、ハイネセンに到着したのは一月一四日のことだった。爺様、モンシャルマン大佐、バグダッシュとコクラン大尉、それにファイフェルと全員一緒で統合作戦本部防衛部へ帰任の挨拶をしたのだが、バグダッシュとコクラン大尉は帰任の報告もそこそこに情報部と後方支援本部へ、爺様は宇宙艦隊司令部へと案内されていった。俺を含めた残りの三人には待命が指示され、手持無沙汰になった俺達は統合作戦本部四五階にあるカフェのBOX席を一つ占拠して、数日後を目途に爺様やバグダッシュ達のスケジュールを確認の上、慰労会を開こうということを決めた。

「バグダッシュ大尉とコクラン大尉は「重要レンタル品」だからな、本店も早く返却してほしかったのはわかる。問題はビュコ
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