暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第48話 帰還
[3/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
いはいなかったので、俺はファイフェルと交代で爺様の補佐と、モンシャルマン大佐の代理として後継参謀長に共同事業の引継ぎを行い、司令部が引継ぎで顔を出せない部署に挨拶をして回った。

「そう、ハイネセンに戻るのね」

 トルリアーニ逮捕の頃に比べ、中央から何故か続々とノンキャリ官僚が送られてきて、ずっと血色がよくなったパルッキ女史は、初めて会った時のように長い足を組んでソファに座って俺を迎えた。
「昨日よりは今日、今日よりは明日、この星域が経済成長しているのは実感できている。まずは良しとすべきでしょう」
「旧司令部としては行政府、特に経済産業庁の皆様にご協力いただいき、大変感謝しております。司令部は全面的に変わりますが、今後ともご協力のほどよろしくお願いいたします」
「経済産業庁としてはとにかく駐留戦力を増強してほしいとは思っているけど、あなたの無謀無茶極まる掃討作戦で海賊が一掃されたことには感謝しているのよ」
「そう言っていただけると、心理的に助かります」

 賄賂というわけではないが、フェザーンから大事に持ってきた帝国産ウィスキーのミニチュアボトルを机の上に置くと、女史は「確かにボトルとは言ったけど……」と細い指を額に当ててぼやくと、組んでいた足をほどいて俺の顔をじっと見つめてから言った。

「軍人であるあなたに聞くのはおかしいとは思うけど、これからマーロヴィア星域が経済発展をしていく上で、次のステップアップになる産業は何だと思う?」
「即効性を求めるなら軍事産業でしょう。安い人件費というのは労働集約産業としては大きな魅力です。ですがそういうお答えを望んではいらっしゃらない」
「あなたも分かって言ってるのでしょう? 分野が広いとはいえ単一行政組織を下地にした経済は強靭性を著しく損ねるものよ」
「ええ。ですので軍事関連施設で製造可能な民間からも必要とされる物資・製品に絞ればよいかと。宇宙船舶の整備・部品の製造や船舶自体の建造。あとは長期保存食糧製造からはじめて最終的には人造蛋白製造プラントのような大規模プラントの製造でしょう」

 俺の回答に、女史の視線はより細く鋭くなる。軍事産業の誘致は確かに大きな魅力で、今後も『大いに』需要が見込める。初期投資も第三セクター方式で軍が補助するので一から始めるよりは楽と言えば楽だ。しかし、宇宙船ドック自体の建造には莫大な投資以上に付随する専門性の高い重工業が必要となる。人造食料プラントなどは知識と技術と労力と資材の最大集約製品と言っていい。そしてそのいずれもが今のマーロヴィアにはない。そんなことは俺も女史もわかっている。

「あくまでも農鉱産資源に立地せよと?」
 数秒の沈黙の後に女史は応え、俺は頷いた。
「経済発展は伸展の余地の大きさに担保されると小官は考えております。マーロヴィア
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ