暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第48話 帰還
[2/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
大尉だけなんじゃが、司令部全員宛で召喚命令が来るとは思わなんだ」
 爺様は相変わらず辛辣な皮肉っぽい冗談を舌に乗せて俺に飛ばしてくる。
「じゃが命令は命令じゃ。新司令部は来年の一月には発足させたいということで、仕事と並行して引継ぎの用意をせねばならん」

 今は一一月で、ハイネセンからマーロヴィアまで一月以上はかかるから、早めに連絡してきたというのはわかる。だが今の司令部が編成されたのは一年と二ヵ月前。予定より早く「草刈り」は終わったが、「種蒔き」は始まったばかりだ。帝国軍によって司令部が壊滅したとか、特にひっ迫した外的要因がない限り、管区司令部は短くても二年の任期がある。司令官に任免権のある幕僚はその範疇ではないが、司令官である爺様までハイネセンに呼び戻されるのは、人事考課に関わった話であるとしか思えない。

 爺様の言う通り「悪いこと」をしたと判断するのはあくまで統合作戦本部と国防委員会の人事考課部なので、「草刈り」作戦指揮官の最終責任者は爺様である以上、作戦が成功に終わったとしても問題があると判断されれば、当然ながら処罰される。

 そういうことなのか、と何も言わず視線だけで爺様を見ると、意外とさばさばしている。
「予定より二年と半年早く帰れるわけじゃからな。女房孝行ができそうで何よりじゃわい」
「しかし、作戦自体に問題があったとすれば……」
「ジュニア。気にせんでいい。仮にそうだとしても作戦案にサインしたのは儂なんじゃからな」
 年季の入った手で爺様は俺の肩を二度ばかり叩いた。軍歴四三年で鍛え上げられた爺様の剛直な精神が、掌を超えて俺に流れ込んできたような気がした。こういう器量を俺は爺様の歳になるまでに獲得できるかどうか。二度目の人生なのに、失敗ばかりしている俺としては些か自信がなかった。

 とにかくどんな形であれマーロヴィアを去らなくてはならないとなれば、事業の補強と後始末を急がねばならない。作戦報告書の取り纏めだけでなく、小惑星帯に残る機雷処理のマニュアル、海賊捕虜名簿の再チェック、作戦後残余となった艦艇・物資のリスト作成など。だいたいコクラン大尉が主体となって、俺とバグダッシュが協力して残務処理を行うことになった。

 一二月を迎え、新任の軍管区司令官であるリバモア准将と幕僚達が次々とマーロヴィア星域メスラム星系へと着任してきた。いずれの顔にも不満の文字が浮かんでいる。年齢から推測して一〇年後に統合作戦本部の要職である人事部長にまでなるエリート軍官僚にしてみれば、中央を遠く離れたド辺境での勤務などしたくもないだろう。そしてこの人事も恐らくは某氏の差し金であろうとは推測できる。一体どうして某氏にそこまで関与できる権限があるというのか。

 そして業務引継ぎと言ってもリバモア准将には次席幕僚という名の無駄飯ぐら
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ