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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第46話 隣地の草刈り
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事であることは間違いない。バーソンズ元准将の作ったシステムを焼き直し、公金を使って手柄を乗っ取った計画で彼女を巻き込んだのは軍であり、事実俺だ。そして彼女自身幸いなことに、この計画の人道的な欠陥を理解している。

 責任を取るという言い方は多分に誤解を招く。だがアレを彼女に紹介することは、劇薬には違いないにしても彼女の労苦を少しは軽減できる効果はあるはずだ。それで彼女が派閥に飲み込まれるとしたらそれはそれで仕方がないが、アレが政府首班になるまでには今少し時間が必要のはず。もっとも憲兵の視線のある現時点で口にする必要はない。

「ひと段落したら、ウィスキーの一杯でも奢ります」
「一〇も年下の男にお酒を奢ってもらうほど女はやめてないわ。せめてボトルと言いなさい」

 小さな舌打ちと共に漏れた『もう少し年上だと思ったのに』という言葉を丁重に無視して、俺は敬礼して彼女の執務室を後にする。予定通りというか、経済産業庁舎を出た段階で憲兵の一人が連絡を受け、宇宙港の検問開始が告げられる。

 現時点で星域外に逃亡するには、自分で宇宙船を作る以外に方法はなくなった。この星には宇宙船を建造するに十分な伝説の天然資源は山ほどある。時間を掛ければ検問だけでは済まなくなるだろう。それは今までの苦労が全て水の泡になることだ。そう思うと自然と駆け足になり、俺が駆け足になれば憲兵達も駆け足となる。

 そして星域治安検察庁庁舎の前で、バグダッシュはただ一人で待っていた。

「ボロディン大尉でしたら、ちゃんと引き連れてきてくれると思ってましたよ」
「……バグダッシュ大尉の小隊は『配置』についたわけですね」
「念のためってやつです。証拠隠滅が無理な時点で、検察長官の生き残る道が一つしかないのは間違いないんですが、人間追い込まれるととんでもないことをしでかしますからね」

 それじゃあいきますか、とバグダッシュは表情同様の剽軽さで検察庁庁舎へと入っていく。果たして自動ドアが開くと、そこには武装した治安警察部隊の二個小隊が銃をこちらに構えて並んでいた。大急ぎで武装したのか装備はバラバラ。なのに顔は全員引き攣っている。

 憲兵隊が宇宙港に検問を作り、星系首相官邸と経済産業庁にも部隊を向けた。何も知らなければクーデターそのもので、大概のクーデターの最初の標的は治安維持組織であり、組織のトップは検察庁だ。軍が海賊狩りと称して経済産業庁と組んで、星域の実権を不法な手段で握ろうとしている。そう見えてもおかしくない。

 さてどうします? と含んだ視線を俺に向けるバグダッシュに、俺は小さく溜息をつくと二歩前に出て治安警察部隊の面々を無言で睨みつけた。面々の視線と銃口は一斉に俺を指向する。一本ならともなく、複数が煌めいたら俺の二度目の人生はここで終わり。三度目がある
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