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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第44話 ブラックバート その3
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を構える画面奥の兵士にむかって、俺は手を挙げてそれを制した。もし事実であればミゲー三四号はいまごろ大惨事で、その混乱で戦艦も逃げおおせただろう。それをしなかったということは、降伏の意思はあるということ。もっとも通話が終わり次第、元准将は手術台に乗ることになるだろうが。

「止まった心臓を動かせる程度まで爆薬を減らすよう、医師には伝えておきます」
「ハハハッ。若いのに小気味がいい。大したものだ……貴官、ヴィクトール=ボロディン大尉と言ったか?」
「はい」
「同姓同名でなければ、ネプティス?の根拠地を吹っ飛ばしてくれたリンチ准将の新任の副官、だったな。エジリが言っていた。如才ないが士官学校首席らしくない好青年で、近いうちに頭角を現すだろうと……どういうヘマをした? こんなド田舎で海賊狩りをさせるほど同盟軍は人材豊富だとは聞いてないが」

 そう言ってニヤニヤと笑う元准将は、同盟領内を股に掛ける海賊の親玉というより、在郷軍人会の顔役のように見えた。もっとも元准将は海賊になる前はそういう立場だったのだが。

「それは軍機になりますので、申し上げられません」
「私怨も多分に含んでおるが、貴官をマーロヴィアなんぞで燻ぶらせるようなアホ人事をした奴を知りたいな。単純に一人の退役軍人として納得がいかん」
「歴戦の閣下のご評価は、小官には過分にすぎます」
「かつて部下にラルフ=カールセンという奴がおってな……才気渙発とは言わないが、巡航艦乗りとして抜群の胆力と根性と機転と気風を有した男じゃった」

 俺は思わず艦橋の端に移動したカールセン中佐に顔を向けようとして、止めた。気持ちよく話している元准将の邪魔はしてはいけないだろう。

「このおいぼれと付き合いがあった故に、どこか遠くで腐っているかもしれん。だが腐らせるにはあまりに惜しい船乗りなんじゃ。大尉。貴官が出世して正式に戦隊指揮官になるようなことがあったら、そいつを探し出して部下にしてやってくれ。他にも紹介したい部下は大勢いるが、コイツはとびきりなんじゃ」

 それは知っている。実力は疑いない。今、ここにカールセン中佐がいると、元准将に伝えたい。喉まで出かかったがそれを飲み込む。

「もし、そういう機会がございましたら、准将のおっしゃる通りにしたいと思います」
「頼んだぞ、大尉。それとそちらの巡航艦の艦長にもよろしく伝えてくれ。『いい腕だった。だが降下即応砲撃は敵に対して不用意に腹を曝け出す。大胆不敵もいいが、今後も使う船と時と場所を真剣に見極めてから使え』とな」
「えっ?」

 通信は元准将の方から切られた。再度繋げようと思ったが、会話が終了したと分かって近づいてくる中佐の姿が目に入ったためその手を止めた。その顔は妙に晴れ晴れとしている。俺が准将の話と中佐への伝言を告げると、
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