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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第40話 訓練
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に対する感情は敵意と隔意と不本意のままで変わらなかったが、訓練に対する熱の入れ方は明らかに強くなった。嚮導巡航艦ウエスカの戦闘艦橋でカールセン中佐の激しい叱咤が飛ばない時間はなく、副長や航海長が砲撃・操舵などの各部署の中間責任者を会議室に呼び出して厳しく叱責することもいつものことになった。

 そしてその会議には必ず俺も同席するようにしている。上司の叱責の敵意の矛先を、部下ではなく俺に向けるようにするための小細工だった。おかげさまで俺はこの特務分隊でどの階級からも満遍なく嫌われている存在となった。特に各艦の中尉や特務少尉といった中間責任者からは、『会議室でネチネチと細かいことを指摘してくる嫌味な首席大尉殿』という評価で固まった。

 常に端末を手に、会議室と戦闘艦橋を行ったり来たりして、人の粗を探している。叱られている様を見ながらも端末をいじり、なぜそのように砲撃や機動をしたのか理由を事細かく質問してくる。戦場に出たこともないくせに、一人前に人の批判をしてくる等々。査閲部にいた頃の数倍の濃度で向けられる敵意に、俺はほとほと呆れつつも、開かれる会議の回数に比例して、分隊の練度が大きく上昇していることに満足していた。

 そしてラマシュトゥ星系に到着し、訓練を開始して三週間後の三月一日。集中的な訓練の成果がはっきりと表れ、なんとか第三艦隊の末席分隊と言っても差し支えないレベルまで分隊の練度が達したのを見計らったかのように、マーロヴィア星域の何処かに居るバグダッシュから超光速通信が届いた。

「お坊ちゃまのご成長ぶりはいかがですかな?」
 明らかにマーロヴィア星域軍管区司令部ではない、場末というかスラムの中にあるアジトのような雰囲気を背景に、私服姿のバグダッシュは何時ものような軽薄な口調で俺に言った。
「もう少しで一月になりますから、そろそろご機嫌を伺おうと思いまして」
「順調ですよ。立ち歩きくらいはできるようになりました」
「まだハイキングをするのは無理ということですかな?」
「まっすぐ歩けるようになったら、こちらからご連絡いたします」
「ご隠居様もそろそろシビレを切らしておりますからね、では」

 お互い敬礼するまでもなく、あっという間にバグダッシュのほうから通信は切られると、同時に圧縮された作戦の進捗状況報告書が俺の端末に直接流れ込んできた。簡潔にしかも整然と内容が纏められた報告書で、それだけ見てもバグダッシュの有能さを十分認識できたが、内容を読み進めていくうちにその大胆さに呆れるといったほうがいいように思えた。

 まず偽名を使って物資の横流しを餌に幾つかの弱小海賊組織に接触して、海賊の勢力分布を既存の情報と照らし合わせていく。そこで確認された海賊組織を大まかに四つに分類したうえで、司令部から星域政府に通告された機雷訓練
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