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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第38話 オーバースペック
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将も渋々承認したというところじゃろう」

 コーヒーを傾けながらファイフェルを叱りつけている爺様の想像はほぼ正解に近いと俺でなくとも思うだろう。だが原作を知る俺としてはコクラン大尉の能力は、勿体ないどころか完全にオーバースペックだとしか考えられない。爺様とロックウェルの現在の関係からも、ツンデレのような真似をするとは考えにくい。この奇妙な人事が意図するところを想像し、ある男の影を感じ取った。それはあまりにも神経質で、原作厨の俺のたくましすぎる妄想ともいえるが、分かりそうな人物に確認せずにはいられなかった。

「この人事に横やりを入れたのはヨブ=トリューニヒト氏ですか?」
 俺の個室をカウンターバーかワインセラーとしか思っていないであろう、赤ワインのボトルを翳してラベルを見ているバグダッシュに、俺は椅子に座ったまま天井を見上げ何気なく聞いた。それに対するバグダッシュの反応は視線を向けていなかったのでわからなかったが、ほんの僅かな時間ではあったが空気が気体から固体へと相転移したのは間違いなかった。再び空気が気体に戻った後で、先に口を開いたのはバグダッシュの方だった。

「……ブロンズ准将閣下も惑わされるわけですなぁ」
「では、やはり?」
「ボロディン大尉がご自分で直接国防委員会やトリューニヒト議員に作戦案を送りつけていないのは確認済みなんですがねぇ……どうしてわかったんです? 後学の為に聞いておきたいんですが」

 それは原作を知っているからね……と言うわけにもいかないのでとりあえず自分の考えたシナリオを説明する。
 ロックウェル少将の『根負け』ともとれる人事。専科学校出身者らしいプロフェッショナルな後方勤務要員を、成功しても評価のされにくい辺境の治安維持作戦への派遣すること。爺様とロックウェル少将のあからさまな仲の悪さを考えれば、軍とは別の力学が働いたと考えるべき。(原作からとは言わないが)ロックウェル少将とヨブ=トリューニヒト国防委員の間で何らかの取引がと……そこまで説明すると、バグダッシュは『もういいです』と言わんばかりに両手を俺の方に向けて翳した。

「やはり高官のご子息の視点というのは違うものなんですなぁ……あぁ、お気を悪くせんでください」
「もう慣れてますよ。で、実際は?」
「治安維持活動も含めすべからく軍事行動は、全て国防委員会に報告することになっているのは軍基本法から言っても当たり前なんですが、辺境の、それもマーロヴィア星域管区なんてド辺境の治安回復作戦なんて、はっきり言って国防委員会の方々のご興味をそそるようなものではないんです」

 興味はないし、第一艦隊を動かすわけでもない。国防の主敵はあくまで帝国軍であるし、他に治安に問題を抱えている重要星域は山ほどある。マーロヴィア星域管区内メスラム星系出身の代議員で
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