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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第36話 鎌研ぎ
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ロヴィア行政府がこの方式に反対するのであれば、その根拠を示してもらいます」
「……たとえ無人星系の、それも一部とはいえ小惑星帯を、ゼッフル粒子で吹っ飛ばすのは『自然環境保護法』に反しないかね?」
「星域開拓以来、この星域で『正確な測量』が行われなかったのはとてもとても残念なことです」

 そこまで言い切ると、ブロンズ准将は肩を落として大きく溜息をついた。
「……若者の捨て身というものをいささか過小評価していたな」
「合法的で一番簡単な方法は、第一艦隊に出動してもらうか、三〇〇〇隻程度の遊撃分艦隊を派遣していただくことなのですが」
「出来れば私もそうしたい。ただそうなると他の星域も手を挙げて第一艦隊が過労死するか、前線で実働可能な制式艦隊が同盟軍から消滅する。その上、海賊がいなくなるのは一時的なもので、艦隊が帰還すれば海賊もまた再発するだろう。消費期限の切れた機雷とゼッフル粒子と通信需品関連だけで話が済むなら、そちらの方がよっぽど安上がりだ」

 ブロンズ准将はそう言うと、俺から視線を外し顎に手を当てて何かを考えていたようだが、しばらくして腰から端末を取り出し操作した後、再び俺に視線を向けた。

「私としては君の立案した作戦が、マーロヴィア星域管区作戦司令部だけで実施するのは現実的に困難なものであると推測する。ウォリス=リングトン中佐の件もある。マーロヴィア星域管区司令部情報参謀の交代要員については情報部で速やかに手配しよう」
「ありがとうございます」
「貴官の作戦立案能力に関しても私はある程度信頼しているが、フェザーンでの一件がある。情報部隊の指揮官が貴官ということでは、情報部長も容易にはご賛同していただけないだろう。部長のご賛同が得られなければ、統合作戦本部長も国防委員会もこの作戦を納得しまい」
「地域交通委員会などの最高評議会他メンバーや、野党の批判対応もあります」
「ハイネセンは我々に任せてもらおう。私は貴官にいささか借りがあるし、シトレ中将に将来干されるような事は避けたいからな」
 皮肉と微笑みの中間のような顔でブロンズ准将は肩をすくめた後で、「そうだ、アイツがいたな」と妙なことを呟くと、小さく鼻息を吐いてから俺に言った。

「扱いにくいが腕の立つ部下が一人いる。貴官より五歳ほど年上だが、階級は同じ大尉だ」

 それはこの作戦を実施するに当たっての応急的な情報要員ということだ。正式に中佐を派遣するとなれば、人事部に掛け合って情報参謀としての辞令を発しなければならない。人事異動が終わったばかりの一〇月に手すきの佐官など情報部にはいない。だから自分の権限で動かせる尉官の部下をひとまず動かす。五歳年長で大尉(つまり二八歳)という事は、昇進の機会を逃している冷や飯食いか、専科学校出身者という事だ。腕が立つということは情
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