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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第36話 鎌研ぎ
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ングトン中佐もグエン少佐も残留組であり、爺様達の到着より前には一応俺の上官であったわけで。僅かな期間とはいえ一緒に仕事をしていた人物に、作戦案を聞かせられないほどの罪があったとは思わなかった。俺はつくづく人を見る目がないと、自省せざるを得ない。

「情報参謀にしろ後方参謀にしろ、人については統合作戦本部からいずれ派遣されるじゃろうが……この作戦案を実施するには、行政府側の協力者も含めて人選が重要になるじゃろうな……さて、どうするかの?」
 爺様は困ったような表情を浮かべつつ俺に視線を向ける。俺に両方の指揮を執れるかと聞くような視線に、俺は唇をかみしめた。

 作戦を実施するに当たり、モンシャルマン大佐の言うとおり意図的に法律を解釈することが必要であり、海賊集団への直接的な情報工作活動が必要であり、膨大な数量になる『小道具』の調達も必要だ。民間経済活動の障害となるような指示もあり、とても俺一人でこなせる仕事量ではないから情報・後方分野における専門家も必要不可欠。俺はフェザーンで情報工作の困難さを身に染みて理解していたし、後方しかも補給・調達関係の知識はあっても経験は全くない。マーロヴィア星域管区に所属している情報課員や後方課員を統率指揮することは可能であっても、作戦を成功させる為には幅広い知識ではなく経験に裏付けされた信用が必要なのだ。

 正規の情報参謀と後方参謀を汚職で失う事になるマーロヴィア星域管区内部で、臨時昇進による管理階級の抽出はさらに困難だろう。戦力が低下している状況下での運用を行ってもらう爺様と、マーロヴィア軍部の再建を担当となる大佐に、これ以上の負担をかけるわけにはいかない。

「……情報・後方作戦指揮者の獲得方法は二つあると考えます」
 方法を選んではいられない俺としては、決断せざるを得なかった。
「統合作戦本部と後方勤務本部に改めて助力を願い出る方法が一つ。もう一つは……国防委員会に直接上申する方法です」

 統合作戦本部はマーロヴィア星域管区の治安改善に激烈な興味があるわけではない。あるのなら宇宙艦隊司令部に命じて第一艦隊をこそ派遣するだろう。それだけの熱意があるとは思えないが、爺様を派遣したというのは『とりあえず改善の要あり』とまでは認識していると見るべきだ。俺が窓口にと考えているブロンズ准将にとってこの上なく迷惑な話だろうが、期間限定でも代理の情報参謀の派遣を拒むまではしないと思う。

 後方勤務本部に関しては、甚だ不明だ。おそらく尻尾の生えている先輩は士官学校の事務監から統合作戦本部の参事官に移籍しているだろうが、今の時点ですぐに頼りになるとは思えない。後方勤務本部にいる同期を頼るのも手だが、顔見知りは大半が中尉だから人事権とは無縁だ。それに本部も「今までの担当者に問題があるので人を派遣してほしい」と
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