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ソードアート・オンライン ーBind Heartー
黒の剣士と蒼衣の少年
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効果音と共にポリゴンのかけらとなって周囲に飛散した。
それに脇目も振らず、俺は腹這いなって倒れているプレイヤーへと目を向ける。
細身のプレイヤーはさっきのリザードマンウォリアーのように爆散することはなく、頭上に見えるHPバーも赤い危険領域に入ったところで停止していた。
どうやら、間に合ったようだ。
この迷宮区に棲息する強敵、≪リザードマンロード≫との単独戦闘を終え、帰り道についていたのだが、先ほどのモンスターにとどめを刺される直前のプレイヤーを発見して、急いで駆けつけてきたのだ。
幸いなことに、リザードマンウォリアーはここではレベルの低いモンスターに属するので、一撃で仕留めることができた。
ひとまず安堵の息をついた俺は、いつものように剣を左右に降ると背中の鞘に納める。しゃらっという金属音が、七十四層の迷宮区に反響した。
それまで唖然としていたプレイヤーは、はっと我に帰ったようで、慌てて目の前で立ち上がる。
そこでようやく、そのプレイヤーの全容が確認できた。
やや色素の抜けた髪は癖っ毛なのか、まるで自己主張するアンテナのように一本だけが跳ねている。その顔つきはまだ少年らしい幼さを残していて、少し小柄なこともあって俺より年下のような印象だった。
まとった装備には金属の防具らしきものはほとんどに見当たらず(俺も人のことは言えない)、深い青色の薄着に同色の腰布。黒いズボン。申し訳程度に巻かれたダークグレーのロングマフラーが特徴的だ。唯一革製なのは肘まである穴あきグローブにブーツ、そして剣帯くらいのもので、腰の後ろには鞘に納められた曲刀がある。

「た、助けてくれて、ありがとうございますっ! ホントに助かりましたっ!」

少年プレイヤーは風切り音が鳴りそうなくらいの勢いで頭を下げてくる。
その正直すぎる行動に、俺は若干たじろぎながらも訊ねた。

「いや、それは構わないけど……。君、転移アイテムか回復アイテムは持ってる? 早く回復しておかないと、ここじゃすぐやられるよ」

「あっ、……実は使い切っちゃって持ち合わせがないんです」

あはは、と苦笑いを浮かべて頬をかく少年に内心で呆れながらも、俺は右手を真下に振ってメインメニューを開く。
その中からアイテム欄のタブをタップし、まだ残っている回復用のハイ・ポーションを数個選択。オブジェクト化させたそれを掴んで少年の前に差し出すと、彼はそれをきょとんと見つめる。

「使いなよ。ひとつでも使えば、全快まで回復できると思うし」

「え……。い、いいんですか?」

このSAOの世間一般では、甘い話には必ず裏がある、というのが常識となっている。
しかし、この少年剣士の反応はどちらかというと本当に遠慮しているように見える。
今時珍しい奴だな、と感じながらも俺はこくりと頷いてやっ
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