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魔王の友を持つ魔王
§9 戦禍来々
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「あー、もうっ!! スサノオのやつどういう教育してんだよ!! みすみす死地に行くなっつーの!!」

 幸せそうに安眠しているエルの毛布を奪い取る。哀れ丸まっていたキツネは籠から投げ出され、畳の上をころころ転がっていき壁にぶつかった。

「ぎゃふっ! ますたぁ、いきな……ッ!?」

 寝ぼけまなこでいたエルも外の気配を察するなり意識をすぐさま覚醒させる。

「これはいったい!?」

「わかんない! 恵那が飛び出していっちゃったから追いかけるよ!!」

 相手が本当にカンピオーネなら恵那が危ない。それなりの実力があることはわかるがおそらくエリカと同等程度、神剣の神懸りで挑んでも相手にならないだろう。着替えている時間すら惜しい。ジャージの上から自分の姿を隠すための黒いコートを羽織り、武器用に傘を持って外に飛び出す。

「うわーお……」

 狼。狼。狼。見渡す限りが狼の群れ。30まで数えたところで黎斗は数えるのを放棄した。なんかもう数えるのが馬鹿らしい。

「この狼よく統率されてますね。あっちに向かっているようですけど、どうします?」

 おそらくこの狼は権能だろう。道路をわき目もふらずに走っていく狼の大群はなんだかシュールだ。恵那が暴走していなければ動画でもとりたいがそんなことをしている場合ではない。狼程度に遅れはとらないだろうが、あの(カンピオーネ)と戦ったら、まずい。

「恵那は……こっちか」

 草薙の剣の僅かな神力を頼りに狼の走り去っていく方向へ目的地を定める。認識阻害をかけて走り出した。狼の進路を邪魔するわけにはいかないので、電線の上を並走する。電線の上にひと息でのる。どういう理屈か、黎斗が疾走しているにもかかわらず、足元の電線に彼の動きが伝わっていない。風で揺れる程度で激しく揺れたりしていない。

「この前のカンピオ−ネの方が行動を?」

 そして、それが黎斗にとってもエルにとっても当たり前。

「わかんない。木々に聞いたけど死人と狼が徘徊してることしか。おそらく護堂とアイツとの戦闘だと思う」

「世も末ですね」

 本当に、世も末だ。こんな大規模に迷惑をかけるのは勘弁願いたい。あの時に逃げずに潰しておけばよかったか、と物騒なことを考えてしまう。

「見つけたッ!」

 少し前に見失った恵那だが再び視界に収めることに成功する。足元で呪力を爆発、一気に加速し恵那に追いつく。当然着地した音も衝撃も全て殺した。

「恵那!」

 その声に恵那が振り向く。追いつくことは無いと思ったのか追ってくることが無いと思ったのかはわからないが、その表情は驚きに包まれている。

「れーとさん!? なんで!?」

「恵那、帰るよ。これ以上は危ない」

「えー、大丈夫だって。
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