月下の決意
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「なぁ...私さ...学校...行ってみようと思う...」
蝉時雨が街に響き渡る蒸し暑い真夏の夜のことだった。鮮やかな金髪を月明かりで輝かせた少女が共に縁側に座る青年に何処か真剣な表情で話しかける。
「そっか...え?...有咲...学校行くの?高校入って一回も行ってないのに?」
「そ、そうだよ...なんかさ、今日おもしれー奴が家に来たんだよ、アホみたいにキラキラとかドキドキとか言ってたんだ...」
「おっおう...なんか凄い奴だな...」
青年が少し引き気味に答える。
「喋ってて抵抗が無かったんだ...」
「...そっか...」
少女――市ヶ谷有咲は数年前、交通事故で両親を無くした。
それ以降、有咲は自分の殻に籠もり、面識の有る数少ない人間――目の前に座っている幼馴染みの青年と彼女の祖母以外とコミュニケーションをとらなくなってしまった。
そんな今まで赤の他人と会話する事の無かった彼女が抵抗を見せなかった。
その事実に青年は驚いたのか眼を見開く。
「それでさ...そいつバンドやってるらしくてさ、さそわれたんだ」
「バンドに?」
「おう、私がピアノやったこと有るって言ったら、今キーボードが居ないから一緒にやろう!、って無駄に高いテンションで誘われた」
「その子凄い子だな...取り敢えず、そのことを切っ掛けに学校行ってみたくなったと」
「それでさ...学校行くとさ...今みたいに一緒に居る時間減るじゃん...だからさ...学校行ったらご褒美で抱きしめてくんね...?」
有咲が青年に羞恥で顔を赤く染めながら上目遣いで言う。
その姿をみて青年は少し顔を赤らめつつも有咲の事をいじり始める。
「ほうほう、それってつまり有咲は俺のことが...」
「べ、別に好きとかそういうのじゃねーぞ!」
「じゃあなんで抱きしめて欲しいの?」
「うっ...そ、それは...も、もういいだろ!」
「わかったよ、教えてくれるまで抱きしめないから」
「うぅ...」
すこしやり過ぎたか?まぁいつも通りだしいっか。青年はそんな事を思いつつ一連のやりとりを楽しんでいた。有咲は羞恥やら何やらが混ざった様な顔をして俯いたままだった。
「ゴメンゴメン。ちゃんとやるよ」
「そ、そっか、ならいいんだ」
青年が謝ると、まだ顔は赤いままだが、有咲は謝罪を受け入れた。
「それじゃ、夏休み終わりから頑張れ
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