第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百十四 〜会議と密談〜
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軍を動かすどころではない筈だ」
「……はい」
「翡(馬騰)は遠い上に体調が優れぬと聞いた。つまり、我らだけで戦いに臨む事になる」
「…………」
「麗羽の事は無論信じておるが、他の者も同じかどうかはまた別の話だ。戦う前から足元がぐらついていてはどうにもならぬ」
「……そうですわね」
何度か自分に言い聞かせるように、麗羽は頷く。
そして、顔を上げた。
「……可能性があるとすれば、甥の高幹ですわ」
「高幹?」
「ええ。お師様はご存じないと思いますわ、わたくしがお師様の後を任されてから冀州に来ましたから」
もう記憶もかなり朧げになってきたが、確かに袁紹には高幹という甥がいたと記されていた。
だが、記憶にも残らぬという事は然程の活躍はしておらぬ筈。
「その高幹とやらが、何故に私を襲う? 会った事もない相手から恨みを買う覚えはないのだがな」
「ええ、確かに高幹はお匠様と直接会った事はありませんわ。ですが、あり得ない話でもないのです」
「……わからぬな」
これが尊攘浪士と言うのであれば話はわかる。
職務とは申せ、新選組時代は多数の者を斬ったり捕らえた。
必然的に恨まれ、狙われる事も多かった。
その中には無論、見覚えのない顔も少なからずあった。
私だけでなく、近藤さんや斎藤君、平助らもだな。
この世でも、黄巾党からならば付け狙われる事もあり得よう。
だが、麗羽の身内……ふむ。
「若しや、麗羽に厳しく当たった事か?」
「いえ、それはありません。お師様からのご指導を、いくら甥と言えども伝えたりなどしてませんから」
「では、別の原因があるのだな?」
「……ええ。身内だからと贔屓するつもりもありませんが、高幹はかなり才気煥発で」
「ほう」
「男に産まれなければ、私や美羽さんと並んで袁家の後継者と目されてもおかしくはなかったかも知れません」
この世は、見事に女子上位。
私のような存在は寧ろ異質、それは華琳らも認める事実だ。
無論、それだけではなく本家分家という血筋の問題もあろうが……。
「後継者候補でない限り、周囲の扱いはお察しの通りでした。……嘗てのわたくしは愚かで、そのような甥の心中に気づく筈もありませんでしたし」
「才はあっても認められぬ、か。故に、歪になったと申すのだな?」
「仰せの通りです。……一方、お師様は殿方にも関わらず認められ出世なさいました」
「……妬み、か」
「そうでしょうね。そして、そんなお師様がこの冀州の近くを通りがかった。……身勝手ではあっても、意趣返しの絶好の機会と考えたのでしょう」
「堂々と名乗りを上げなかったのは、麗羽にまで累が及ぶと考えたか」
「それもあるでしょう。それに、お師様に真っ向勝負を挑んでも勝て
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