第1部
アッサラーム〜イシス
シーラとアッサラーム
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か。それは残念。ですが、勇者様のお仲間さんだけでも観ていってくださるなら大歓迎です。もちろんお代はけっこうですので」
座長さん、隙あらばなにか利益になりそうなイベントを提案しようとしていてなかなか抜け目がない。さすがにそれに乗っかる我らが勇者様ではなく、あっさりスルーした。
結局座長さんは残念そうな顔をしながらも、最初の予定通り公演の準備のバイトを了承してくれた。バイト代は、ビビアンさんが言った金額よりも少し多い上、さらにいつでも劇場に入れるフリーパスまで用意してくれた。って言ってもたぶん使うのってナギだけだと思う。
ビビアンさんはこのあと稽古があるといって稽古場に向かった。ナギが名残惜しそうな目で彼女を見送るが、ユウリの冷ややかな視線に気付き我に返った。シーラは劇団の人を見かける度に、声をかけたりかけられたりして久々の仕事仲間との会話を楽しんでいる。
いいなあ、シーラは同い年くらいの友達や仲間がたくさんいて。
生まれも育ちもカザーブ一筋だった私には、同年代の友達はおろか知り合いもほとんどいない。例の魔物襲撃事件によってもともと少なかった同年代の子達は私以外全員亡くなってしまったし、辺鄙な村だったから他所からやってくる人も滅多にいない。
でもそういえば、一人だけいた。ルークと言う名の男の子で、確か何ヵ月もたたないうちにまたいなくなっちゃったんだ。病弱で、修行だか療養だかでその子が師匠の家にやってきて、私と一緒に武術の稽古をしてたっけ。
親が忙しくて、たまに寂しいと言っていたその子は、普通とは違う雰囲気をまとっていた。今頃どうしてるかな。
なんてぼんやり思い出に浸ってる場合じゃなかった。これから大道具さんのところへいって手伝わなきゃいけないんだった。
私はユウリ、ナギと一緒に舞台の設置や飾りつけ、照明の準備など。シーラはここで仕事してたときもやっていた、チラシ配りとお客さんの呼び込み、案内や誘導などを任された。
こういう裏方の仕事は、初めての経験もあって楽しかった。誰かのためにする仕事って、こんなにやりがいがあるんだな、と感じさせてくれる。
そんなこんなであっという間に時間は過ぎ、気づけばお昼を回っていた。仕事が落ち着いたところで、皆食堂にあつまり、ビビアンさんからもらった食事券を使ってお昼を食べることにした。
食堂は劇場内に併設されており、食事をしながら歌や踊りを観ることができるスペースになっている。今はお客さんがいないので、食事代さえ払えば私たちや従業員もここで食事をすることができるそうだ。
席に座るとほどなくシーラがやってきた。皆の分の料理を注文し、他愛のない話をしていると、やがて料理が運ばれてきた。鶏肉の
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