第1部
アッサラーム〜イシス
シーラとアッサラーム
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『砂漠に入れない!?』
翌朝早く、ルカを迎えに再びドリスさんの店を訪れた私たちは、店の前で出迎えてくれた彼女の開口一番の一言に、思わず素っ頓狂な声を上げた。
「ああ、仲間の情報があってね、夕べから砂嵐が頻発してるそうだ。こういうときはやめた方がいい」
ルカがいないのは、ドリスさんが行かないと判断したからだろう。ユウリは暫く思案し、口を開いた。
「……そうか。わかった。明日は大丈夫そうか?」
「今日の状況次第さね。まあ、この時期はそうしょっちゅう起こるわけでもないし、夕方には落ち着くだろう。とりあえずすぐ出発出来るくらいの準備はしておくんだね」
そう言うと、用件が済んだからか、さっさと店に戻ってしまった。
「……どうするか……」
急に何もやることがなくなってしまった。砂漠に行く準備は昨日大急ぎで済ませてしまったし、特に行くあてもない。
「う〜ん。だったら、あたしが働いてたところに行かない?」
脇からぴょこん、と顔を出すシーラ。
「って、昨日見た劇場?」
「そーそー。もちろん今の時間はやってないけど、ここ離れてからゆっくり挨拶もできなかったし、皆にも紹介したいんだ」
そういうことなら、と私はちらりとユウリを見る。特に不満があるわけでもないようだ。まあ、なにもしないよりはましだと判断したのだろう。
「でもよ、こんな朝早くから人なんているのか? それとも従業員はあそこでみんな寝泊まりしてるのか?」
「みんなじゃないよ。家から通ってる人もいるけど、あたしみたいに家のない子なんかは寮があって、そこで生活してるんだ」
ナギの疑問に答えるシーラ。なんかさらっととんでもない事実を聞かされた気がするんだけど、気のせいだろうか?
ともかく、手持ち無沙汰となった私たちは、シーラの言うとおり、劇場へと足を運ぶことにした。
ドリスさんの店を離れ、昨日と同じ道を行く。夜とはうって変わって、劇場周辺は静寂に満ちている。
シーラは慣れた様子で裏へと回り込み、正面入り口と比べて随分小さく作られている木製の扉へと手をかけた。
ガタガタッ。
「シーラ……。やっぱり鍵かかってない?」
「えへへ。やっぱダメみたい」
コツン、と自分で頭を小突くシーラ。うん、もう、かわいいから許しちゃおう。
なんて言っていたら、遠くから人の気配とともに、地面を踏みしめる音が聞こえてきた。
「あら? あなたひょっとしてシーラ?」
凛とした声が響く。振り向くと、そこには桃色の髪が印象的な、若い美女が立っていた。
年は二十歳頃だろうか。目鼻立ちの整った容姿はけして近寄りがたい雰囲気ではなく、寝起きの無防備な姿
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