第1部
アッサラーム〜イシス
商人の町
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「聞いてると思うけど、うち貧乏だろ? 単純にお金を稼ぎたかったからさ。父さんも昔、師匠のところでお世話になってたみたいでさ。商売としての腕はこの街でも指折りっていうから二人に頼み込んで無理やり弟子にしてもらったんだ」
「へえぇ……。なんか、ルカがそんなに根性ある子だとは思わなかった。なんかかっこいいね」
「へへっ、まーな」
そう言いながら得意げに胸を反らす。すぐ調子に乗るところは私に似たのかもしれない。
「あっ、そんなことより、明日大丈夫なの?! 体術なんて、ろくに覚えてないでしょ?」
「いや〜、勇者さんたちがいるから、大丈夫かなって思って。アネキだって、魔物の二、三匹くらい余裕で倒せるんだろ?」
「そういう問題じゃないでしょ! あと一言言っとくけどね、ユウリを怒らすと怖いんだから!」
「え、ちょっと待って、どういうこと?」
「言ってることそのままの意味だよ。嘘とかそういうの、すぐバレるから」
「ええ……、どうしよう」
私がぴしゃりと言い放つと、途端にルカの態度が小さくなる。昔から見切り発車というか、考えなしに行動したり、他人任せな所があったけど、今も変わってないみたいで私はさらに不安が募った。
「そ、それじゃアネキ、取り敢えずおれはこれからお得意先に寄ってくから、また明日師匠のところで待ってるよ。勇者さんたちによろしく!!」
慌てた様子で急に仕事モードに切り替わったルカは、要点だけ簡潔に言うと、別れの挨拶もそこそこに別の路地へと入っていった。都合が悪くなるとすぐ逃げるのも悪い癖だ。
この先、ホントに大丈夫かな?
「あれ? ミオちん、るーくんは?」
初めて聞くあだ名だが、きっとルカのことだろう。
「なんか仕事あるみたいで行っちゃった。また明日だって」
「そっかあ、残念。でもま、明日またお話すればいっか♪」
ルカの不在に気づいたシーラはそう言うと、なぜかその場でくるっと一回転する。それを横目で見ていたナギが、私に向かってぽつりと呟く。
「なんかお前と正反対の性格してるよな」
その言葉の意味が良くわからず、頭にハテナマークを浮かべる私。小さい頃はよく似た者姉弟とか言われてたんだけど、一体どう言う意味なんだろう。
「そういう鈍くさいところが弟と似てないって言ってるんだ」
冷ややかな目で言うユウリのセリフを聞いて、私は納得した。いや、納得してる場合じゃないけど。
「あっ、ねえねえ、あれ見て!」
シーラが立ち止まって、ある場所を指差す。軒を連ねる商店街を過ぎて少し開けた広場に、大きな建物が建っていた。お城よりは小規模なその建物からは、眩しいくらいの照明と音楽が漏れ出ており、周辺の人々や場の空気を盛り上げていた。
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