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俺様勇者と武闘家日記
第1部
アッサラーム〜イシス
商人の町
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、自分には向いてないのかすぐ途中で逃げ出してた気がしたんだけれど……。

 ためしに目で『本当に大丈夫?』と訊いてみる。案の定彼は、目を泳がせていた。いや、全然大丈夫じゃないじゃん。

「どちらにせよ、 今日はもう遅いから明日出発するんだね」

 ドリスさんの言うとおり、今町の外に出るには遅すぎる時間だった。宿もとってないし、明日の準備も必要だ。ユウリも同意し、ひとまず店を出て休息をとることにした。





 ドリスさんの店を出て数分後、同じく店から出てきたルカが後ろから追いかけてきた。

「どうしたの? ルカ」
「いや、師匠が、せっかく姉ちゃんに会えたんだから、ちょっとは話してきていいって」
「ドリスさんが?」

 仕事中のルカをわざわざ私のところに行かせるなんて、ドリスさんてなんて優しいんだろう。

 ここは彼女の好意に甘えさせてもらおう。先頭を歩くユウリを呼び止めると、後ろにいるルカに気がついたのか、皆立ち止まってくれた。

「あの、遅くなっちゃったけど、紹介するね。私の弟のルカ。私より5つ下の11歳で、さっき見た通り、商人になるためにドリスさんのところで修行してるの」
「はっ、はじめまして! ルカといいます! 姉がいつもお世話になっています!」

 緊張しながらも、はっきりとした声で自己紹介をするルカ。

「姉より大分しっかりしてるじゃないか。俺はユウリ。見ての通りアリアハンの勇者だ」
「やっほ〜! シーラだよ☆ よろしくねっ♪」
「オレはナギ。盗賊だ。よろしくな」
「よ、よろしくお願いします!」

 ナギが白い歯を見せてルカの前に手を差し出すと、ルカはぎこちなくその手を握った。その後傍らにいる私の服の裾をくいくいとつまんだ。

「どうかしたの?」

 皆に聞こえない程度の小声で尋ねる。

「なあ、アネキ。本当にあの人が勇者なのか?」

 そう言って、鞄の中身を確認し始めたユウリを指さした。

「うん、そうだよ。それがどうしたの?」
「そっか……。なんかイメージと違うね。もっとガタイのいい人かと思った」
「あはは。でも確かに、あの英雄オルテガさんの息子だよ。剣だけじゃなく呪文も得意なんだから」
「へえ、そうなんだ。でも、姉ちゃんがあの人たちと一緒にいるってことは、きっと間違いなく勇者なんだよね」
「そうだよ。ちょっと難しい性格してるけどね」

 一言多い、と本人に怒られそうだが、事実なのだから仕方がない。ふと実家での出来事を思い出した私は会って一番伝えたかったことをルカに話した。

「そうだ、ルカ。エマが心配してたよ? 最初ロマリアに行ってたって聞いたけど、なんでアッサラームに?」

 ルカは、苦笑しながら答えた。

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