第1部
アッサラーム〜イシス
商人の町
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「なあ、ミオ。知り合いなのか?」
「知り合いもなにも、私の弟なんだよ」
ナギの問いに少し冷静になった私は、先ほどドリスさんが言っていた『あの子』というのが、ルカだということに気づく。何しろその英雄の息子に会いに行くとルカや家族の前で宣言したのは、他ならぬ私なのだから、その情報をドリスさんが知っていても不思議ではない。
確かお父さんの知り合いのところで修行してるって聞いてたけど、まさかドリスさんがその人だったとは。しかも彼女、かなり商売上手だ。そんな人に弟子入りしてるなんて、同じきょうだいとして鼻が高い。
そこまで考えて、私がルカの姉であることにドリスさんは薄々気づいていたのではないだろうかと気づく。最初にじっと見ていたのもルカに似ていると思ったからだろう。確かに背丈は私の胸くらいだが同じ黒髪だし、目元や鼻筋はよく似ていると言われている。しかしそれでも家にいるときのやんちゃな少年だった頃に比べて、今のルカはまるで別人のようにたくましく見えた。
そんなルカは事情もわからず、かと言って身内の前で早々に奥に引っ込むわけにも行かず、手持ち無沙汰な状態でドリスさんの横に立っていた。
「……これだけ買い物をしてくれたんだ。サービスで、その『魔法の鍵』の場所を知ってる奴のところへ案内してあげるよ」
「本当か?」
ユウリの瞳が光り輝く。ドリスさんは、にやりと笑いながら、
「ああ。ただあたしはもう年だし、店の方で忙しいから、案内はこの子にやってもらうよ」
そう言って、ルカの方を指差した。
「え……? おれですか!?」
突然指名され、明らかに動揺するルカ。店に戻るなり、いきなり勇者御一行を案内することになるとは思いもしなかっただろう。しかもその中に、実の姉が混じっているのだ。
「これも修行の一つさ。砂漠のど真ん中に住む変わり者のじいさん、お前も知ってるだろ?」
「ああ、ヴェスパーさんですね。……わかりました! 今すぐ準備してきます!」
「ついでに、あいつにこの間仕入れたもの見せてやりな。あいつは珍しいものが大好きだからね」
「はい!!」
ドリスさんに指示を受け、文句一つ言わず忙しなく動くルカを見て、私は内心感動していた。家にいたときとはまるで違う。好奇心の塊で、いつもお母さんを困らせていたあのルカが、こんなにしっかり者になるなんて。
「おいガキ。町の外に行くってことは、魔物を倒せるくらいの力はあるんだろうな?」
「あっ、えっと……、いつもは他の冒険者さんたちと同行するんですが、一応姉や行商人の父に、ある程度の体術は教えられてきました!!」
ユウリに尋ねられ、私の方をちらりと横目で見ながら元気よく答えるルカ。
確かにルカにも体術を教えようとはしたけれど
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