第1部
アッサラーム〜イシス
商人の町
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がわざとそういう装飾にしてるんだよ! ちょうどここのクロス部分にあしらうことでデザインに幅を持たせてんだ。そんなこともわからないのかい?」
「そんなことはわかっている。俺が言いたいのはここの装飾に不規則な傷があると言ってるんだ」
「よく見な。そこは光の加減でそう見えるだけさ。この角度で見てごらん」
「お前の目は節穴か。どうみてもこの部分は違うだろうが」
「あんたこそどこに目がついてんだい。これはこういう技法で……」
などと舌戦を繰り広げること数十分。結局最初に提示された値より少し負けてはくれたが、ユウリが望む金額には程遠かった。
あのユウリを値切らせないなんて、すごい人だ。現にあれほど交渉を続けていても平然としているドリスさんに比べて、ユウリの方は疲労の顔が出ている。
「はい、じゃあチェーンクロスと、鉄のオノだね。……誰が持つんだい?」
ユウリは無言で、ナギにチェーンクロスを、シーラに鉄のオノを渡した。
「え……買ってくれんのか?」
「そんなわけないだろ。自分で払え」
「はあああ??!!」
まあ、そうだよね。でも二人のために選んだり、値切ろうとしただけでも進歩したと思う。
「そこの武道家っぽい子には選んであげないのかい?」
急に話を振られ、戸惑う私。私には師匠からもらった鉄のツメがあるし、今さら買うものなんてないのだけれど。
「武器はいらん。それよりこいつに合う防具はあるか?」
意外にも、ユウリは私の防具まで選んでくれようとしていた。
「防具ねえ……。武道家が装備できるってなると、なかなか在庫がなくてねえ……。あ、これなんかどうだい?」
そう言ってドリスさんは、別の場所から木の箱を取り出した。この品物だけ扱いが特別ってことは、そこそこ立派なものなのだろうか? 期待に胸を膨らませながら箱の蓋が開かれるのを待つ。すると――。
「他ではまずお目にかからない一品さ。その名も、『魔法のビキニ』!」
魔法のビ……え!?
防具とは思えない名前とその姿かたちに、私の目は点になる。
「見た目に反して防御力は他の防具より段違いに高くてね。なにより重量を気にすることがないから、あんたみたいな武道家にとっちゃ、うってつけの防具だよ」
「え、あ……はあ……」
いやでも、さすがにこれを着て魔物を退治するなんて、無理すぎる。勇者より勇気がいる。一瞬、水着姿で町中を練り歩く自分を想像して、やっぱないなと思った。
「おい、マヌケ女、まさか本当に着る気じゃないだろうな!?」
ユウリの殺伐とした表情に、私はあわてて否定する。
「まさか、着るわけないじゃん!! ごめんなさい、ドリスさん。せっかく出しといてもらったんですけど、やっぱり無
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