第1部
アッサラーム〜イシス
商人の町
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っほー、ドリス。お買い物しに来たよ♪」
シーラの声に反応したのか、店の奥から何やら物音が聞こえてきた。しばらくして、火を灯した大きなランタンを持った店の主が姿を現した。
「いらっしゃい。おや、珍しい。シーラじゃないか。久しぶりだね」
シーラと顔見知りであるその人は、白髪混じりでモノクルをかけた老婆だった。ランタンを天井に吊るす際、背筋をぴんと伸ばす姿が歳の割に若々しく見えた。
明るくなった店内で彼女は私たちを見た途端、見定めるように一瞥した。特に私の顔をじっと見ていたので、なにか言われるんじゃないかと思わず身をすくめた。
「見たことない顔だね。あんたの仲間かい?」
「うん♪ こっちから勇者のユウリちゃん、ミオちん、ナギちんだよ」
「随分雑な紹介だな」
ナギのツッコミを無視し、ドリスさんは勇者であるユウリを眺め見た。じろじろと顔を見られ不快に思ったのか、ユウリは苛立ちを顔に出しながら言った。
「おいばあさん、勇者がどんな存在か知らないようだから教えてやろう。俺は何を隠そうアリアハンの……」
「ふん、まあいいさ。それで今日は何の用だい?」
「人の話を聞け!」
喚くユウリを尻目に、シーラがずいと前に割り込み話を進める。
「今日はみんなでお買い物に来たんだけど、なんかオススメのものってある?」
「うちは薦められないようなもんは売らないよ。そういや、アルヴィスは一緒じゃないのかい?」
「あー、今あたし、ユウリちゃんたちと一緒に旅してるんだ」
「そうかい。いつも一緒だったからてっきり喧嘩でもしたのかと思ったよ」
「そんなことないよ。それより早く見せて!」
いつも一緒にいたと思われるアルヴィスさんの存在も気になったが、それよりも急かすような口ぶりのシーラもどこか違和感を覚えた。しかしそれに動じることなく、ドリスさんは私達に背中を見せると、店の奥からいろんな品物を引っ張り出してきた。
「あんたが本当に勇者だってんなら、こんなのはどうだい?」
そう言って広げてくれたのは、今までどのお店でも見たことがない武器や防具だった。私に商人ほどの審美眼は備わってないが、ぱっと見ただけでそれなりの価値があるということはわかる。
「どうだい? 今ならお得意さんのこの子に免じて、二割引きで売ってあげるよ」
ぴくりとユウリの眉根が上がる。彼はすぐ近くにあった鎖状の武器を手にすると、険しい目つきでまじまじと見た。そしてため息をつくと、その武器をドリスさんの目の前に突きつけた。
「二割引きだと? おい、この柄のところを見てみろ。細かな傷がついてるぞ」
言われてドリスさんはモノクルをかけ直し、じっと見る。
「何言ってんだい! こりゃ傷じゃなくて職人
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