第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百十三 〜冀州、再び〜
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はあるがな。
「麗羽。成長したな」
「そ、そうでしょうか?」
「以前ならば全てを見下していた者と同一とは思えぬ。斗誌や猪々子は兎も角、今のお前は自分の力で信頼を勝ち取ったのだ」
「お師様……」
「城下を見ればわかる。苛政を敷いていたのであれば、斯様に活気のある街にはなるまい。そして、仮にそうであれば元皓も嵐もこの場にはおらぬ。そうであろう?」
「仰せの通りです。僕の理想は、助軍校尉様のなさりようですから」
「でも、大変だったんだぜ? 根っからのお嬢様育ちだから、やる気ばっかり空回りしてさぁ」
「だが、今はこうして勤め上げている。その結果は、誇って良いのだぞ? 麗羽」
「ほ、本当ですか……? お師様、わたくしをお認めに……?」
「さて、それはちと先走り過ぎと申しておく。精進を怠られては、私が皆に甘やかすなと叱られる」
「そう……そうですわね」
肩を落とす麗羽。
些か手厳しい気もするが、まだまだ学ばねばならぬ事も多かろう。
あの袁紹なのだ、この程度で満足して貰っては……な。
「刺史様。校尉様もお疲れでしょう、一先ずお休みいただいては?」
「あ、元皓さんの言う通りですわね。お師様、ではまた」
「うむ、世話になる」
悠長な事は言えぬであろうが、次の動きに備えるまでの猶予ぐらいは得られよう。
「こうして、歳三殿の傍にいるのもいつ以来でしょうな」
「……すまぬ。私にもすぐにはわからぬ程、としか浮かばぬ」
「ウチかて、寂しかったんやで? 歳っち以外の男なんて考えられへんし」
その夜は臥所にて、疾風と霞と共に床入りと相成った。
風が順番を決めていた筈だが、それもわからぬ程になってしまった。
合流した後は、それも改めて話さねばなるまい。
「埃塗れのまま、歳三殿に抱かれるのも気が引けましたから。漸く、という気もしますな」
「疾風も乙女やなぁ。歳っちなら、たぶん気にせえへんで?」
「や、やかましい! いいではないか、好きな殿方の前ぐらい!」
「別に悪いちゅう訳やない。ウチかて、汗臭いまま歳っちに抱き着こうとは思わへんしな」
「……二人共。私を挟んで遣り合うのは止せ」
両腕に力を込め、二人を抱き寄せた。
「私を好いてくれるのは男冥利に尽きる。だが、私はお前達が皆無事でいてくれる事が何よりだ。それを忘れるな」
「勿論、忘れる事などあり得ませんぞ」
「愚問やで、歳っち」
「……なら良い」
「あ、でもなぁ」
そう言いながら、霞はその見事な胸を押し付けてきた。
「大事に思うてくれるんやったら、もう一回……ええやろ?」
「お、おい! 歳三殿、ならば私も!」
ふむ、今宵は眠りにつけるのはまだまだ先のようだ。
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