第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百十三 〜冀州、再び〜
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が、こうして見ると曹操と袁紹は互いに本拠地は間近であったのだと気づかされる。
敵対する者同士でなければ何も問題はなかろうが、相争う情勢では緊張が絶えなかったであろう。
ギョウも平時ならば交通の便も良く、都にも近いという意味で地の利はあるが……麗羽も気が抜けぬ日々を過ごしている筈だ。
……と、前方から砂塵が巻き上がっているのに気づいた。
それなりの数だが、この辺りで賊とは考えられぬ。
双眼鏡を取り出し、相手を確かめてみる。
……ふむ。
「歳兄さん、それ何ですの?」
興味津々とばかりに、真桜が尋ねてきた。
「目に当てて見よ」
「ほな、失礼して……。うわ、遠くがはっきり見える!」
「え? 真桜ちゃん、沙和にも貸して欲しいのー」
「ちょい待ち! いやぁ、こんな絡繰は初めて見たわ」
「こら、真桜に沙和! 主様に失礼だぞ!」
「……なあ、歳っち。ホンマにこの三人、迎え入れて良かったんか?」
呆れ顔の霞。
「それよりもお兄ちゃん。あれは何なのだ?」
「うむ。旗からすると猪々子の手勢だな」
麗羽が迎えを寄越すなら、斗誌が不在の今確かに適任ではあろう。
元皓(田豊)も嵐(沮授)も、恐らく書簡の山と格闘している最中。
況してや、麗羽本人が出るなど以ての外。
そして、集団から一騎が出て此方へと駆けてきた。
間違いない、文醜本人だ。
手を振りながら、近づいてきた。
「真桜」
「え? あ、す、すんまへん! お返しします」
「いや、興味があるのであろう? 暫く貸しておく、但し壊すでないぞ?」
名残惜しそうにしていた真桜の顔が、わかりやすい程に輝いた。
「いやぁ、流石は歳兄さん! 話がわかるわぁ」
「主様、あまり真桜を甘やかさないで下さい!」
甘やかしたつもりはないのだが、凪に怒られてしまった。
それを見て笑う鈴々ら。
全く、道化ではないのだぞ私は。
「ほう」
ギョウの城下に入ると、思わず声が出た。
久方ぶりに見る街には、活気が溢れていた。
「賑やかですなぁ」
「前よりも人が増えているのだ!」
疾風と鈴々が、懐かしげに辺りを見渡す。
「お店も一杯なのー!」
「いろんな物扱っとるなぁ、こりゃ陳留にも負けとらんで」
「おい、二人共。勝手に行動するんじゃない!」
「歳三アニキも、個性的なのを次から次へと召し抱えるっスねぇ」
お前には言われたくないぞ、猪々子。
それにしても、凪はいつも振り回されている印象だな。
……斗誌とは、気が合いそうではあるが。
「…………」
ふと、俯いている雛里に気づいた。
「如何した?」
「……え? あ、あわわわわ……」
「慌てずとも良い。
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