第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百十三 〜冀州、再び〜
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もっと頼っていただきたい」
そう言って、強く手を握ってくる疾風。
嘗てのように、私が動かねば組織が立ち行かぬという事もない。
比較にならぬ程の優れた者らが、こうして付き従っているのだ。
頼っているつもりではあったが、意識のどこかで自らが動かねば……そんな思いがあったのやも知れぬ。
そろそろ、私にも意識改革が必要……そういう事であろう。
このような場合でなければ、自ら刀を遣うのも控えるべきか。
「慕われているのですね、主様」
と、いつの間にか凪まで此方に来ていた。
真名を預かった以上、呼び方は任せるとは申したが。
凪のような真面目な者からそう呼ばれると、慣れぬ故か違和感があるな。
当初は他の者と同じように呼ぶつもりであったようだが、真桜と沙和に何やら言われたらしい。
その直後は渋い表情をしていた凪だったが、何度か言い直して此れに落ち着いた。
いつまでも私が慣れぬままでは、凪の性格ではやり辛かろう。
とりあえず、表情には出さぬようにせねば。
「有り難い事だ。だからこそ、今の私がある」
「私などまだまだ若輩者ですが、華琳様は予てからよく仰せでした。……主様が羨ましい、と」
「で、あろうな」
私自身への執着もそうだが、人材を求めるという点であれ以上に貪欲な者はまずおらぬ。
優秀な人物は何人いても困る事はないが、それにしてもあ奴は兎角熱心であった。
……本来であれば、稟や風、霞、疾風、彩(張コウ)、詠、愛里(徐庶)らはその麾下であった。
その上、凪らまで結果としてその下を離れる事となってしまった。
正気を失ったとは申せ、華琳はさぞや怒り狂っている事であろう。
どうあっても、対決は避けられまいな。
凪らの為にもこの戦い、ますます以て負けられぬ。
……無論、負け戦は好みではないがな。
「歳兄さん、そろそろ接岸するみたいですわ」
「皆さんも歳三さまも、準備するなの!」
大河ではあっても穏やかであれば川を渡るだけの事、対岸が間近に迫っていた。
雨が降れば濁流と化していたであろうから、今がそうでない事は僥倖とも言えたが。
華琳の追手が迫っている気配もない。
何かの罠である可能性も否定は出来ぬが、雛里の読み通り裏をかけたと考えても良かろう。
油断は禁物だが、異変があれば恋が察知する筈。
雪蓮もそうだが、あの勘働きはどうやっても真似出来そうにもない。
……しかし、凪の呼び方は慣れぬだけだが、真桜はこの通り。
それこそ、愛紗が聞けば間違いなく激昂しかねぬ。
引き合わせる前に、よくよく申し聞かせねばなるまいな。
黄河からギョウまでは、さしたる距離はない。
あの官渡は黄河を挟んで向こう側に位置する
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