第1部
カザーブ〜ノアニール
夢みるルビー
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たことを知っているのは、わしの他にはいないだろう。村を代表して、重ねて礼を言うぞ」
村の呪いが解けても、マディンさんの息子さんは帰ってこない。それでも、一人残されたマディンさんは生き続けなくてはならない。
マディンさんにとって、それはとても辛いことだ。それでも彼は、笑顔で私たちを見送ってくれた。
そもそも、皆がこんな辛い思いをするくらいなら、駆け落ちなんてしない方がいいんじゃないのかな?
私にはまだ恋とかしたことないし、偉そうに言える立場じゃないけど、やっぱり自分が幸せになるなら周りにも祝福してほしい、って思う。
などとぼんやり考えながら夕日を眺めていると、視界の端で呆れ顔をこちらに向けているユウリと目があった。
「相変わらずの間抜け面だな、間抜け女」
もう何度目のやり取りだろう。もうすっかりユウリの毒舌が一種の挨拶として定着してしまっている。私は半ば諦めたようにため息をついた。
「そんなに私の顔って間抜けかなぁ?」
「そんなことを聞いてる時点ですでに間抜けだろ、間抜け女」
そうすげなく言い返され、小さく肩を落とす。もうちょっと言い方をなんとかしようとは思わないんだろうか。
と、ふとあることを思い出す。
「間抜け女じゃなくて、ミオだってば。……洞窟にいたときはちゃんと名前で呼んでくれたじゃない」
私は唇を尖らせながらユウリを見た。実は私が洞窟でルビーを眺めてたとき、ユウリが私の名前を呼びながら止めてくれたのを知っている。
すると、いつもの強気な姿勢はどこへいったのか、急に沈黙してしまった。
「もしかして、今気づいたの?」
「……」
無言。てことは、無意識だったのかな?
それはさておき、彼の様子を見るに、今まさにユウリに一矢報いるチャンスかもしれない。これを機に私やシーラたちにもちゃんと名前で呼んでもらおう。
「じゃあさ、試しにもう一回名前呼んでよ! 私、またユウリに名前呼ばれてみたいな」
「なっ、ばっ……、バカか! 用事もないのに呼べるか!」
いつになく動揺の色を隠せないユウリ。気分を悪くしたのか、そのままそっぽを向いてしまった。
なんだか見てはいけないものを見たような気分になり、これ以上からかうのはよそうと口を噤んだ。
そこへ、ナギとシーラが走りながらこちらへ戻ってきた。シーラの手にはこの前おじいさんと約束したお酒がぶら下がっている。
「ったく、ホントにお前は酒のことになると人一倍しっかりしてるよな」
「えへっ、だって約束してたもん♪ ちゃんと守らないとね♪」
「二人ともあのおじいさんのところにずっといたの?」
「いや、そのあとちょっと村の様子をぐるっ
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