第1部
カザーブ〜ノアニール
夢みるルビー
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時に、静寂に包まれた村に人の話し声が次々と聞こえてくる。人の足音、動物の鳴き声、どれも当たり前に耳にする音だ。だが、この村にとっては十数年ぶりのことなのだ。
「よかった……! これで皆普通の生活に戻れるね」
私がほっとしながら言うと、隣にいたユウリが難しい顔でため息をつく。
「そんな簡単に普通の生活に戻れるとは限らないけどな」
「え?」
「眠ってたとは言え十数年も経ってたんだ。色々困ることも出てくるだろ。例えば、あそこの家を見ろ」
ユウリに言われるがまま、西側に建っている家を見た。よく見れば、あちこち壁に穴が空いており、ちょろちょろとシロアリやネズミが行き来している。さらに屋根と壁の間には蔦や蜘蛛の巣が張っており、見る限りとても今後人が住めるような状態ではなかった。
「おそらく村人は呪いの副作用で老化までは進んでいないようだが、建物までは作用してなかったようだな」
「でもよ、案外何とかなると思うぜ? オレが住んでた塔だって、ジジイがオレくらいの頃からアジトとして使ってたらしいし」
「お前ら家族と同じに考えるな」
冷静にユウリが言い放つ。
「そういえばナギのおじいさんって、昔何やってたの?」
確かおじいさんの弟子が、ユウリが今持ってる盗賊の鍵を作った人だったんだっけ。てことはやっぱり……。
「ジジイの話だと、当時アリアハンじゃ知らない人はいないくらい有名な義賊だったらしい」
「義賊?」
「昔のアリアハンって今より魔物がいなかったからなのか知んないけど、貧富の差とか結構ひどかったみたいだぜ。そんでジジイをリーダーに盗賊団結成して、悪どい商売してるお偉いさんから金品盗み出して貧しい人たちに分けてたらしい」
「へぇ〜、ナギのおじいさんってすごい人だったんだね!」
「てぇことはぁ、ナギちんもおじーちゃんみたいになりたくて盗賊になったの?」
「ちっ、ちげーよ!! ただなんとなく生活するのに便利だと思ったからだよ!!」
シーラの鋭い指摘に、ナギは顔を赤くしながら必死に反論した。なんて分かりやすい反応なんだろう。
「お前ら、無駄話してないでさっさと行くぞ」
ユウリに促され、はっと顔を見合わせる私たち。そうだった。もう一人、報告しなければならない人がいるんだった。
「そうか……。あいつはエルフの娘さんと一緒に行ってしまったのか……」
落胆するマディンさんの表情は、何か吹っ切れたようだった。
きっと、こうなることを予想していたのかもしれない。女王様の時とは違い、妙に落ち着き払っている。
「ありがとう。息子の居場所を探してくれたばかりか、村の呪いまで解いてくれるとは、夢にも思わなかった。おそらく今まで呪いがかけられてい
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