第1部
カザーブ〜ノアニール
夢みるルビー
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私たちにしか出来ないことがあったんだ。
このルビーを女王様に返せば、何か変わるかもしれない。私たちはユウリの呪文で洞窟の外へと戻り、再びエルフの里へと向かった。
「そうですか……。ではアンはあの男を本当に愛していたのですね……」
ユウリからルビーと手紙を受け取った女王様は声を震わせ、自身を納得させるようにそう呟いた。陶器のような肌の彼女の顔は、以前会った時よりも蒼白の色が滲み出ている。
「私が二人を許さなかったばかりに、アンには辛い思いをさせてしまった……。私は、私はなんて愚かだったのでしょう……」
真紅の瞳から零れる無数の涙が、彼女の娘に対する愛情の深さを表している。女王様も、娘のアンさんに幸せになって欲しかったんだ。でも、どこで間違ったんだろう。掛け違えたボタンのように、お互い本当の気持ちを理解出来ないまま、悲しい結末を迎えてしまった。
「……わかりました。こうなってしまったのは私にも原因があります。この『目覚めの粉』を持って行きなさい。それでノアニールの呪いは解けるはずです。きっとアンもそれを望んでいることでしょう」
女王様は側にいるエルフに『目覚めの粉』を持ってこさせ、ユウリに渡した。ユウリは深々とお辞儀をし、申し訳なさそうに言った。
「ありがとうございます。私も女王様の心中を察することもせず、不躾な態度をとってしまい申し訳ありませんでした。では、私たちはこれで失礼させて頂きます」
くるりと踵を返し、この場から離れようと歩を進めようとしたとき、女王様に呼び止められた。
「先日、あなたは勇者オルテガの息子とおっしゃいましたね。あなたも、魔王を倒すのですか?」
「はい。父は私が幼い頃魔王を倒しに行ったまま、消息を絶ちました。未だ魔物が蔓延る世を平和へと導くため、私は父の意志を継ぐことにしたのです」
「……そうだったのですね。私は人間全てを許した訳ではありません。ですが、この世界を救ってくださるあなた方には、出来る限りの協力をします」
そういうと、今度は右手の中指に嵌めてあった小さな指輪を外した。
「アンの居場所を教えて下さったお礼も兼ねて、この『祈りの指輪』を差し上げましょう」
小さな宝石がついたその指輪は、なんとなくだがさっきの洞窟と似た神秘的な雰囲気を出しているように見える。
「ありがとうございます。必ず魔王を倒し、世界に平和をもたらすことを約束します」
指輪を受け取ったユウリは、まっすぐに女王様を見据え、力強く言った。
ノアニールに戻り、ユウリは早速『目覚めの粉』を使用した。粉を手のひらに乗せてみると、粉がひとりでに宙を舞い、やがて村全体に散らばっていった。
手のひらから粉が全てなくなると同
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