第1部
カザーブ〜ノアニール
夢みるルビー
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私はハッと我に返った。
今……私どうなって……?
「ミオちん! 大丈夫!? 返事がないから心配したよ〜!!」
「どうしたのシーラ? 私今どうなってたの?」
「あの宝石見たとたん、いきなりミオちんが石像みたいに動かなくなっちゃったんだよ!!」
「どっ、どういうこと!?」
「本っ当にお前はトラブルメーカーだな! あのままずっとあの宝石を見てたら今頃マヒして一生動けなくなるところだったんだぞ!!」
「ゆっ、ユウリ?! どうして!?」
後ろを振り向くと、怒りと焦りに満ちた顔のユウリが私の体を支えていた。
「あれは『夢見るルビー』と言って、見た者をマヒさせる危険な宝石だ。そして……エルフの里の宝でもある」
そう言って手を離すと、その場にしゃがみこみ、地面にめり込んだルビーを力を入れて外した。
「どうしてこんなところにあるのかわからないが、これだけでもエルフの女王のところに返していかないとな」
ユウリはなるべくルビーを見ないように埃を払い、自分の懐に入れた。
「なあ、きっとこれ、二人が書いた手紙だよな」
ナギがルビーと一緒に置いてあった瓶を掘り起こすと、中にある手紙を取り出した。私たちもそこに集まり、ナギが手紙を広げるのを待つ。
手紙には、小さな文字でこう書かれてあった。
『お母様へ。先立つ不幸をお許しください。私たちエルフと人間、この世で決して許されぬ愛ならば、せめて天国で幸せになります。ーアンより』
そんな……。まさか二人は……。
私は無意識に湖の底を覗き込む。けれど、底は闇が広がっているだけで何も見えない。その暗くはっきりしない闇は、まるで今回の出来事を反映しているかのように思えた。
手紙を読み終えたナギも、沈痛な面持ちで湖を見つめる。
「……二人はここへ身を投げたってことなんだよな。もっと早く周りが気づいてやってれば、こんなことにはならなかったんだろうに」
そういうとナギは、湖に向かって拝礼をした。シーラもナギの隣に座り、必死に涙を拭っている。
私たちがもっと早くここに来ていたら。
理解してくれる誰かが周りにいてくれてたら。
エルフの女王が娘のことを受け入れてくれてたら。
いろんな後悔がどんどん生まれて、それをどれだけ思い付いても、現実を思い返すたび泡のように儚く消えていく。過去はどうやっても戻ることはできない。わかっているのに悔しい気持ちが溢れだす。
ふと肩にぽん、と手を置かれ振り向くと、ユウリが湖の方を見ながら何かを決意したように言った。
「とりあえず、俺たちが今できることをやるぞ」
そうだ。ユウリの言うとおり、
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