第1部
カザーブ〜ノアニール
エルフの里
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だといい、ここノアニールに呪いをかけてしまった。
それから何年たっても息子とエルフの娘は戻らず、村人も未だ目覚めることはないと言う。
「息子たちを待っているが、あれから十年以上の年月が経った今でも一度も戻ってきていない。会えずとも、せめて今どこで何をしているかが知りたいのじゃ……」
「近くにエルフの里があるんだろう。なぜ直接女王に会って話をしない」
ユウリがもっともな意見を言うが、老人は眉間に皺を寄せながら首を横に振り、
「会いに行こうとした。だが、呪いはわしにもかけられていてな。何度この村から出ようとしても出られないのじゃ。これでは息子たちを探すことすらできない……」
そういうと、手を両手で覆い、嗚咽を漏らした。
村から出ることも出来ないなんて……。なんでここまでひどいことをするんだろう。
「そんなに自己中心的な奴らなのか、エルフ族は。なら、勇者である俺が直談判してやろう」
「なんと、あなた様は勇者なのか?! ということは、オルテガ様のご子息では?!」
マディンさんのその言葉に、ユウリは目を丸くした。
「親父のことを知っているのか?!」
「うむ。確かあれは村が呪いにかけられる前日のことじゃ。わしは直接お会いしたわけではなかったが、宿屋から出ていくのを見たんじゃ」
「ということは、その日にこの村を出たってことか……。なんの用事があってこの村に来たんだ?」
「さあ……。宿屋にいた人なら知ってるかもしれんが、生憎わしは偶然見かけただけなんでな。オルテガ様の真意はわしにはわからぬ」
「……まあいい。そんなことより今はエルフの女王のところに行くのが先決だ。おいジジイ、その女王がいる場所を教えろ」
「女王がいるエルフの里は、ここから西に半日ほど歩いた先にある。……じゃが、本当に助けてくれるのか?」
「ふん。最初はあまり気乗りしなかったけどな。お前の話を聞いたら気が変わった」
そういうとユウリは、すっくと立ち上がり、マディンさんに手をさしのべた。
「俺がこの馬鹿げた呪いを終わらせてやる」
勇者のその言葉を聞いて、マディンさんの瞳に光が宿る。
「おお……! ありがとう……! あなたこそ、真の勇者じゃ!!」
マディンさんはユウリの手を両手でしっかりと握りしめると、ゆっくりと立ち上がり、何度も何度もお礼を言った。
その光景をしばらく眺めていると、いつの間にかユウリがこちらを見ているではないか。
「何をボーッとしてる。早くエルフの里に向かうぞ」
「あ、ごめん。今行くよ」
私はあわてて皆のあとを追う。
ユウリの言うとおり、ボーッと見てしまっていたのは自覚していた。なぜなら、さっきの二人のやりとりが、
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