暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百十二 〜再会する者、迷う者〜
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がわかれば良いのだが、現状我らにはその余裕がない。
 待ち伏せも可能性としては高いが、華琳が追跡に手を抜くとも思えぬ。
 今こうしている間に、密かに包囲されていてもおかしくはない。
 無為に時を過ごすのは得策ではないが、まずは方針を定める必要があるな。

「雛里」
「はい」
「徐州入りが危険な事はわかった。では他の手立てを考えねばなるまい」
「……そうですね。上中下と策があります」
「全て申してみよ」

 雛里は頷き、一同を見渡した。
 楽進も、顔をこちらに向けている。

「まずは下策から。恐れ多い事ですが、洛陽に向かいます」
「陛下に庇護していただく、か」
「……はい。白蓮さんもいらっしゃいますし、そのまま西涼に向かい馬騰さんに協力を仰ぐ事も可能かと」
「せやけど、雛里。曹操の勢力圏内を逆戻りする事になるで。いくら何でも無謀過ぎや思うけど」
「その通りです。それに、今曹操さんが全力を出せば白蓮さんだけで防ぎ切るのは困難かと」
「……うむ、確かに下策だな。では中策は?」
「雪蓮さんを頼ります。距離はありますが、少なくとも曹操さんの追手からは遠ざかります。兵はそこまで多くないでしょうが、その強さはご主人様がよくご存知かと思います」
 状況は異なるが、赤壁の戦いのような状況になるな。
 上手く揚州に華琳の軍を引き込めれば、水軍も含めて相応に戦えるやも知れぬ。
 しかも、徐州にいる月らと合流すればそこまで寡勢にはならぬ。
 一見上策にも思えるが、雛里にはこれが最良ではないようだ。
 他の者らも、頻りに首を傾げている。

「これを上策と言わぬ根拠は何か?」
「まず、雪蓮さんが睡蓮(孫堅)さん戦死から完全に軍を立て直せているかどうかの見極めがつきません」
「……うむ」
「情報がない状態で、それを当てにして向かうのは危険があります。最悪、混乱に巻き込まれる恐れもあります」

 雛里は一旦言葉を切り、続けた。

「それに、曹操さんがそれを読んでいる可能性も捨てきれません。待ち伏せだけであれば、大軍は必要ありませんから」
「確かにそれはあるやも知れぬな」
「或いは、袁術さんを動かして足止めを狙っていてもおかしくありません」
「……中策とは申せ、その分危険も大きいか」
「なら雛里、上策は何や? まだ聞いとらへんけど、どうもそれしか道がないような気がするんやけど」
「では、申し上げます。……河北に向かいます」
「待つのだ雛里! こないだ襲われたのをもう忘れたのか?」
「勿論忘れてはいないよ、鈴々ちゃん。でも、あの時の犯人がまだわかっていないのも事実」
「麗羽じゃないって事か?」
「少なくとも、麗羽さんがご主人様を襲う理由はないよ。ご主人様、推測ですが……麾下の何者かが独断で動いたと思います」

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