第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百十二 〜再会する者、迷う者〜
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鈴々もなのだ……」
止むを得ぬ事とは申せ、恋が勘働きだけで私を救いに出た為に霞も行軍の準備などする暇はなかったらしい。
輜重隊の備えどころか、最低限の食糧すら携帯できぬまま押っ取り刀で駆けつけた状態であった。
従う兵も少数であったとは申せ、それでも糧秣なしで行軍するのは無理がある。
さりとて、此処はまだエン州。
華琳の支配域で、現地調達など危う過ぎる。
故に、猪や鹿、川魚などと捕りつつ凌いではいるがそれとて限りがある。
私や雛里、楽進らは兎も角恋と鈴々は元々が大食漢……量を賄える筈もなく。
徐州にさえ入れば、事態も好転が望めようが……。
「あ、あの……ご主人様」
おずおずと、雛里が話しかけてきた。
私に対する遠慮など無用とは常々申しているのだが、なかなか改まらぬようだ。
が、あまり無理強いをさせるつもりもないので……追々しかあるまいな。
「何か?」
「あ、あわわ……。す、すみません」
「意見があるなら申せ。謝らずとも良い」
「は、はい!……追手がない事が、気になりませんか?」
雛里の言葉に、思案を巡らせる。
確かに、陳留を脱して後ここまで追手の類に出くわさずにいる。
無論、霞が巧みに追撃をまいている事も確かではあるが……華琳が果たしてそれに釣られる相手であるかと言われれば疑問はある。
正気を失っているとは申せ、その頭脳まで鈍っているなどと思うのは楽観が過ぎよう。
雛里が危惧しているのも、その辺りか。
「つまり、先回りして待ち伏せている可能性があると申すのだな?」
「そうです。徐州との境は、封鎖されていると考えた方が」
「うむ……」
杞憂と笑い飛ばす事も出来ぬ。
徐州では恐らく朱里や風らが善後策を練っているであろう。
が、未だ私が正式に赴任した訳でもない地で果たして迅速な動員がかけられるであろうか?
こんな事であれば、月を新たな刺史として任ずるよう陛下に言上すべきであったやも知れぬ。
悔いても詮無き事ではあるが、今は兎に角この地を如何にして脱するか。
私の決断如何では、この場にいる全員を死地に陥らせる可能性もある。
此処まで私を信じてついてきてくれた者らを、そのような目に遭わせる訳にはいかぬ。
況してや、楽進は何としてでも生き延びよう取り計らわねば。
「では雛里は、このまま徐州に向かうのは危険だと申すのだな?」
「そ、そうですご主人様。勿論、座してこのままというのはお勧めしませんが」
「うむ。霞、どうか?」
「ウチか? せやなぁ、雛里の懸念も尤もかも知れへんなぁ。ウチなら、もっと執拗に追手出してるやろうし」
「……兄ぃの邪魔する奴、恋が許さない」
「でも、お腹が空いて力が出ないのだ……」
州境の様子
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