離別のファクター
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声も目の前にいるのに遠くから発せられてるぐらい聞こえづらい。足も力が入っている気がしないし、手だって指先の感覚が無い。でも、敵は見えている……戦うべき相手の姿だけはしっかり捉えている。
「ほんのちょっと驚いたけど、立ち上がってきたところで所詮は風前の灯火。いつでもトドメを刺せるけど、意思で動けてるのなら少しだけからかってみよっか」
昏い目で嘲笑ってきた彼女は次の瞬間、籠手を掲げるなり周囲に展開していた影を一気に広げ、まだ被害の及んでいなかった聖王教会の建物や、この場から必死に逃げていた教会関係者も飲み込み始めた。途端に男女問わず大勢の大人と子供の悲鳴が聞こえ、数多の命が無慈悲に取り込まれていく惨状が広がってしまった。
「ん〜、ライフドレインの感覚って病みつきになるね。ヴァンパイアが吸血したがる気持ちがよくわかるよ」
「や……止め、ろ……!」
こんな凶行、すぐに止めねばならない……そう気力を振り絞ってバルディッシュを振り下ろすが、その勢いはさっきとは打って変わって非常に遅かった。当然、容易くよけられてしまい、更に振り下ろした勢いを抑えきれずに倒れこんでしまった。
「ふふふ、もうわかるでしょ。勝負がついたことぐらい」
「ま……だ……」
「やめなよ、そんな根性は無駄だから。絶望や困難なんか意思や根性でいくらでも覆せる、なんて考えはもう古い。未来を食いつぶす時代遅れの思考なんだよ。それがわからなかったから、“高町なのは”は壊れた。ドラッグマシンのようにまっすぐ突っ走って、ブレーキを無視して曲がらず壁にぶつかって自滅した。フェイトちゃん、今の君だって同じだよ」
「あなたが……それを、言うの……!」
「言うよ。だって私は元々“そういう存在”なんだもの。誕生の起因は外から与えられたとはいえ、“高町なのは”に私は必要だった。本当の自分を委ねられる場所……と言えば聞こえはいいけど、実質感情のゴミ捨て場だったのさ。でも、“高町なのは”は周りに受け入れてもらうために、私を否定した。架空の人物と話すのはおかしい……おかしい人間は受け入れてもらえない……受け入れてもらえないのは苦しい。だから消した……赤の他人に良い子だと思われるために、私は消される羽目になった」
「いったい、何を言ってる……?」
「邪魔な対象を消したところで、望み通りの結果が得られる訳が無い。“高町なのは”の一部だった私を消したから、彼女は自分が見えなくなった。自分を見て欲しい、構ってほしい、愛してほしい……そういう感情をずっと閉じ込めていた場所が消えた結果、虚ろなる闇が彼女の心に根付いた。いや……闇は最初からあったけど、それが膨れ上がっていくのを認識出来なくなった。結果、“高町なのは”は常に空虚感に苛まれることになった」
なのはの
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