大きな罪
終わりと始まり
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認して、電源を切り布団に入ったのだった。
その頃。ある家の一室では、一人の少年が笑みを浮かべていた。
「柏木玲。底無しの努力家が、ここまで天才になるとは。だけど、これからが本番だよ。」
少年は不敵な笑みで画面を見ていた。
「ゲームはまだ始まったばかりだ。」
朝。僕は玲から、事件は解決したと聞いた。やっぱり、事件だったのか。玲も大変だな。仕事に学校、そして部活。それなのに僕は、あんなことを言ってしまった。きっと迷惑だろうな。
「宏。ちょっといい。」
「どうした。」
「放課後。部活が終わったら、話しがあるんだけど。」
「わかった。」
そう僕にささやいて、拓真と二人でクラスに帰る玲。彼女は別れ際に手を振っていた。僕はその姿を見送った。
「玲はいい子だな。」
「そうだな、宏。」
「いい子だし、頭も良い。」
「玲は、頭は悪いぞ。」
「そうなのか、結城。」
「中学の時。俺とあの二人の中では、玲が一番ペケだったぞ。」
「知らなかった。」
「努力したんだよ、玲は。」
そう告げる結城は、どこか優しかった。玲は頭が良かったのではなく、良くなった。彼女は努力家なのだろう。昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り、僕は自分の席に戻った。
部活が終わった放課後。僕は未だに部室にいた。ドアの開く音がして顔を上げると、玲が立っていた。
「話しって、何。」
「この前のことなんだけど。」
この前。何だろうか。
「私も、宏のことが好きだよ。」
「え。」
「でも、一緒に出かけたりとか、彼女らしいこととかできないかもしれないし。それに。」
僕は玲を抱き寄せた。
「宏。」
玲が不思議そうに、聞いてきた。
「何もいらない。ただ、君が。玲がいてくれたら、それだけでいい。」
「ありがとう。」
二人で帰る帰り道が、こんなにいいものだとは思わなかった。
「今日はどうするの、玲。」
「自分の家に帰るよ。週末からまた、向こうの家に籠もるから、その準備とかするの。」
「そっか。その時には呼んでくれよ。手伝うから。」
「ありがとう。」
玲は笑って答えた。
「一人で作業しているのも寂しいから、来てくれたら嬉しいな。」
「行くよ。」
玲を手伝えるなら。と心の中で付け加えた。
「今日はありがとう。また明日ね。」
「また明日。」
手を振り、去っていく背中を見つめた。
柏木玲。
彼女は僕にとって、部活の部長で、親しい人で。大切な人だ。これからも、こんな日々が続けば良いのだけど。
だけれども、現実は時としてあまりにも残酷過ぎる結果を残していく。玲の過去は、この時の僕は知るはずもなかった。そのことがきっかけで、今の玲がいることも。ただこの時、淡い想いを抱いていただけだった。
「もう、三年が経つね。早いな。」
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