第三章
[8]前話
「あのままだからな」
「自覚ねえんじゃねえか?才能ないって」
「そうかもな」
「無神経だしな、あいつ」
「鈍感だしな」
「ったく、本当に寿司屋になれよ」
「あいつの授業受けたらそれで数学わからなくなるからな」
授業を聞いてそれは出来ないというのだ、そうしたことを話して授業を受けてまた顔は笑って彼に寿司屋になればと言った。
仁志はその言葉を笑っていなした、だが。
授業の後でだ、生徒達は仁志が去った教室の入り口を忌々し気に観つつ言った。
「今日もわからねえ従業しやがって」
「だから言ってることわからねえんだよ」
「人にわかる授業しろよ」
「自己満足の授業するなよ」
「本当に寿司屋になれ」
「もう教師辞めろ」
「人に教える才能ないんだからな」
こう言うのだった。
「寿司屋になれって嫌味で言ってるけどな」
「それもわからない位鈍感なんだな」
「だから教師やっていけてんだな」
「学校の教師って屑多いっていうしな」
「教える才能ない、努力しない、嫌味もわからない」
「ああいうのが無能だっていうんだな」
「俺達もああなったら駄目だな」
こうも言ってだ、彼等は彼等で勉強するのだった。
「授業わからないからな」
「もう聞いても無駄だよ」
「それじゃあな」
「俺達でやるしかないからな」
「塾に行って予習復習して」
「俺達で理解しないとな」
こう言って勉強する者は勉強した、仁志はその彼等を見て喜んで話した。
「皆よく勉強していて何よりだよ」
「お前の授業がわからないからだよ」
「本当に理解しろよ」
「自分がどれだけ才能ないかわかれよ」
「本当にお前の授業わからないんだよ」
生徒達は陰で言った、だがやはり仁志は気付かない。そうしてそのままわからない授業をしていくのだった。見事定年まで教師を務めたが最後までわからない授業をしてそれを自覚することもなかった。そして笑顔でいい教師生活だと語り卒業した生徒達に唾棄された。あんな無能な教師はいなかったと。そうして本当に寿司屋になっていればとこの時も言われた。
寿司屋になれ 完
2019・11・12
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