竜は異界の風を見せるか?
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れた銘は読めますか?」
キュルケとギーシュが、既にその墓石にはりつくようにして文字を睨んでいた才人の両脇から覗き込み……、口々に声を上げた。
「なにこれ? 何処の文字なの?」
「古いルーン、に見えなくもないな……。
魔術の心得でもあったのかね、貴女の父君は?」
ぶつぶつと何事か呟きながら墓石に手をあてている才人を他所に、二人は老女に問うた。
「いえ、義父が魔法を使ったことは一度も。
……義父の遺言には、この墓石の銘を読むことが出来たものに『羽衣』を譲れ、とだけありました」
「ヒントの類は、何かないの?」
「それが全く。
読むことが出来たものは自然と名乗り出るだろうから答は教えないでおく、などとも言ってはおりましたが……」
「「うーん……」」
その場に屈かがんで唸る二人を余所に、才人は何気なく立ち上がって老女へと振り向き、口を開いた。
「お婆さん」
「はい?」
「お婆さんのお父さんって、ホウショウ、とか、クニサキとかって苗字じゃありませんでしたか?」
「「……はい?」」
突然何か言い出した才人に呆ほうける二人を放置し、老女は呻くようにそれに答えた。
「確かに、義父はその字あざなをクニサキと名乗っておりましたが……、何故、それを?」
JSSDF第2師団 邦咲隼人くにさきはやと二佐 ここに眠る
「それがこの墓石の銘、ですか。
……なるほど、義父が自然と名乗り出ると言った意味がわかりました。
こういうことでしたか」
得心したような、でもどこか不満そうな老女が、ため息とともにそう溢した。
本当は遺言を盾に諦めていただくつもりだったのに、それが裏目に出てしまったのだ。
教えてもいない義父の名前を言い当てられてしまっては、言い逃れのしようもない。
ため息ぐらいの無礼は、許されたっていいだろう。
「仕方ありませんね……。
それでは、貴方に『羽衣』をお譲りしましょう。
家族にも知らせてきますので、しばらくお待ちいただけますか?」
「あ、それならさっきの庫くらの方で待たせてもらってもいいですか?
タバサも待ってますし」
「あたしたちは、一緒に着いていかせてもらうわ。
お墓でじっと待ってるだけなんてやぁよ、あたし」
「あ、はい。
……そうですね。それでは、お二方はこちらへ……」
村の中へと向かう三人と別れ、再び丘の庫くらに戻ってきた才人は、左手で『竜の羽衣』に触れてみた。
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