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fate/vacant zero
禁断の果実
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かね?」



 思いっきり鼻でお湯を吸い込んだ。


「げほっ、ぐほぁっ、がはぅっ」


 咽る咽る、てか痛い痛い痛い。



「あー。大丈夫かぃ相棒?」


「こほ、こ、これが、大丈夫に見えんのかおま……」

「いや、全然」


「なら聞くなよ! ってか、いきなりなに言い出しやがる!?」

「いやだってほら、相棒ここんとこ蒼い娘っこの優先順位がえらく高ぇし」


 そうか?



「そんなに俺ってタバサ優先してた?」

「アレで自覚ねえんだったら痴呆かなんかだと思うぜ、オレっち」


 そこまで言うか。

 そりゃ確かに、港町ラ・ロシェールで泣きついてからこっちずっと借り増やしっぱなしだったし、何かとタバサが視界に入るなぁとかは思ってたけど。


 別に疚やましい気持ちがあるわけじゃぁ――



『タバサの部屋で二人きりになったとき』

『蒼い髪から甘い香りが流れてきたとき』



「――ベツニ、ヤマシイキモチハ、ナイよ?」

「相棒、オレっちの目を見て言ってみな?」


 それはどこを見ろとぬかしてんだお前。

 あと煩悩ども、ちょっと黙ってろ。



「なあ伝説の剣よ」

「いかにもオレは伝説の剣だが、突然どうしたね伝説の使い魔」


「お前は二千年も生きてきて、誰かを守ろうとか、そんな風に大事に思ったことは無かったのか?」


 は、とデルフは軽く震えた。



「守るのはオレじゃねぇよ。

 オレを握ったヤツが、誰かを守る。それで充分だ」


「可哀想なやつだなぁ……」

「そうでもねえさ。この方が、返って気楽だよ」


 そんなもんかね?



「そんなもんだよ。

 そもそもオレっちにはそういうの向いてねえからな。

 シェルと違って自力では動けねえし」


 それもそうか。



「俺も自力で動けるわけじゃねえんだがな」



 人の体に動かさせる、って感じだよな、どっちかって言うと――ん?



「あれ、娘っこ? ……と、シェル」



「……(じー)」

「俺はついでか? デルフ」



 声のした方に視線を向けてみれば、その腰にシェルを佩おびたタバサが、俺をじっと見つめてきていた。



「タバサ、どうした? 何かあったのか?」

「……お風呂?」


 へ? あ、これか。

 脈絡無いっていうか答えになってないけど、その辺は気にしない。

 よくあることだし。



「ああ。俺の国の、昔の風呂だよ」

「入れさせて」









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