禁断の果実
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じゃ、始めるか」
「頑張って。それを読み終えれば、次は魔法語ルーンに移る」
そいつは実に楽しみだ。
よろしく頼むな、タバサ。
こっくりと、なんだか燃えた目をしたタバサが頷いた。
「腹減ったなぁ……」
俺はいま、風呂の用意をしている。
以前、サウナに入ったときに不満に思ったこと。
なんとしても張ったお湯に浸かりたくて、絶対に試してやろうと考えたことを、実行に移したわけだ。
ちなみに夕飯は喰い損ねた。
タバサの机が扉側にあるのが悪い。
習いたての魔法語ルーンをいざ試しに掛かるまで、時間に気付けなかったからな。
振り返った窓から月が見えたときは素で驚いたぞ。
それからタバサと二人して食堂まで走り、真っ暗な食堂で軽く絶望もした。
……思い出せば思い出すほど腹が減るからそれは置いとこう。
この風呂釜の正体は、午前中にマルトーの親父さんから貰ってきておいた、元調理用の大釜だ。
釜の下には薪がくべられ、水面にはちょっと厚みと縁ふちを削って裏返した木の蓋が浮かんでる。
この蓋を踏み沈め、底板にして風呂に浸かるんだ。
五右衛門風呂ってヤツだな。
火加減間違うとホントに釜茹でになるから気をつけねえといかんけど。
ちなみにここはギーシュと戦ったヴェストリの広場、その隅っこの壁際だ。
ちょうど学生寮とは本塔を挟んで反対側になるこの広場は、この時間には基本的に誰もいないので都合がよかった。
なんせ、見咎められると面倒そうだからな。
そうこう考える内にちょうどいい湯加減になったので、手短に服を脱いで蓋を踏み、全身で湯に浸かる。
夜気に冷やされた体によく煮えた湯がじんわりと沁み込んでいく。
うん、やっぱりこれでこそ風呂、って感じだよな。
ついでに露天で、なお結構。
「いい湯だねぇ、こりゃ」
「ご機嫌だね、相棒」
風呂釜の傍の壁に立て掛けたデルフが声を掛けてくる。
「かれこれ半月ぶりぐらいの"こういう風呂"だからな。ああ、生き返る〜」
タオルを頭に乗っけて、世界を染め上げる二つの月を眺めて。
実に心地よい異世界式露天風呂に、身も心もふにゃぁっと蕩けていくような錯覚が、麻薬の如く体を廻る。
鼻の少し下までを湯に沈めてぶくぶくとしてみる。
だいぶガキっぽい行動なのに、久しぶりすぎてなんだか楽しい。
「ところで相棒」
「ん゙〜?」
「お前さん、あの蒼い娘っこがそんなに気にいったん
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