第三部
古い凧歌
亡国なきくにからの便たより
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があった。
それが、先ほどの光景が幻覚ではなかったことを教えてくれる。
クロムウェルとウェールズが歩み去った・・・・・・・・・・・この場で、フーケはやっとの思いで口を開いた。
「あれが、『虚無』……、死者が蘇った?
そんな、バカな」
「『虚無』は生命を操る系統だと……、閣下が言うには、そういうことらしい。
俺も今の今まで信じていなかったんだが、目の当たりにしてしまうと、信じざるを得んな」
現実に、ウェールズは、甦よみがえったのだから。
クロムウェルの親衛隊として。
今度は、トリステインの敵として。
フーケは乾いた笑い声を漏らしながら、ワルドに訊ねた。
「もしかして、あんたもさっきみたいに、『虚無』の魔法で動いてるんじゃないだろうね?」
「俺か? 俺は違うよ。幸か不幸か、この命は生まれつきのものさ」
そう呟くワルドは、だが空を見上げて呟く。
「しかし。しかし、だ。
伝承の通り、数多あまたの命が聖地に光臨せし始祖によって与えられたとするのならば――、
全ての命は、『虚無』の系統によって動いている。
そう取れはしないだろうか」
さっと顔から血の気を引かせたフーケは、慌てて胸を押さえた。
心臓の鼓動を確かめるために。
自分が生きているという確信を持つために。
ワルドが、そんな様子を苦笑しながら見つめた。
「そんな顔をするな、これは俺の憶測だ。
妄想といってもかまわん程度のな」
ほっとフーケが安心し、長く息を吐いた。
「脅かさないでよ」
怨めしげに、ワルドを見つめながら。
「でもな、俺はそれを確かめたい。
これが妄想に過ぎぬのか、それとも真実なのか。
きっと聖地にその答えは眠っていると、俺は思うのだよ」
この翌々日のことである。
正式に、トリステイン王国王女アンリエッタと、帝政ゲルマニア皇帝アルブレヒト三世との婚姻が発表された。
式はそれより一ヵ月後に行われる運びとなり、それに先立って軍事同盟が締結されることとなった。
同盟の締結式はゲルマニアの首都、ヴィンドボナで行われ、トリステインからは宰相のマザリーニ枢機卿が出席。
条約文に署名を行い、ここに同盟は成った。
そのさらに翌日。
今度は、アルビオンの新政府樹立の公布が為された。
三国間には緊張が走ったが、神聖アルビオン共和国が象徴、初代皇帝クロムウェルはすぐさま特使を両国へ派遣。
不可侵条約の
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