暁 〜小説投稿サイト〜
fate/vacant zero
第三部
古い凧歌
亡国なきくにからの便たより
[18/21]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
りを挙げた。



「余は、オリヴァー・クロムウェル。
 貴族議会の投票により『聖邦復興同盟レコン・キスタ』総司令官を勤めさせていただいているよ」


 男、クロムウェルは苦笑をその顔に抱いた。



「元はこの身なりの通り、一介の司教に過ぎぬのだが。
 貴族議会に選ばれたからには、微力を尽くさねばならぬ。

 微力の行使には、信用と権威が必要でね。
 始祖に仕える聖職者の身でありながらも『余』などと自称することを、赦してくれ給えよ?」


「畏れながら、閣下は既にただの総司令官ではございません。今ではアルビオンの……」

「皇帝だ、子爵」


 クロムウェルは、目の色を変えずに哄わらう。



 まるで、二人の人間が重なっているような。

 暖かい色と、冷たい色が同時にその場に存在しているような、不思議な眼だ。



「確かにトリステインとゲルマニアの同盟阻止は、余の願うところではある。
 だが、それよりももっと大事なことがあるのだ。

 なんだかわかるかね? 子爵」


「閣下の深いお考えは、凡人の私には量りかねます」


 クロムウェルは両手を振り上げると、かっと眼を開いた。



「『結束』だ! 鉄の『結束』だ!
 ハルケギニアは我々、選ばれた貴族たちによって結束し、聖地をあの忌まわしきエルフどもから取り返す!
 それが始祖ブリミルより余に与えられた使命なのだ!」


 双眸から暖かい色は消え、冷たい色が表に出る。

 それでも、二人の人間がそこにいるような、奇妙な気配は残ったままだが。



「『結束』のために必要なものは、お互いの信用だ。
 だから子爵、余はきみを信用する。
 安心したまえ、同盟は結ばれてもかまわないのだ。
 どのみちトリステインは裸でな。余の計画に変更はない」


 そういうクロムウェルのま両眼まなこには、半分だけ暖かい色が戻ってきた。



「外交には二種類あってな。杖とパンだ。

 とりあえずトリステインとゲルマニアにはパンをくれてやる。
 こちらとしても、杖を振るうための精神力が必要だ」


「御意」


 ワルドが深々と頭を下げる。



「トリステインは、なんとしてでも余の版図に加えねばならぬ。
 あの王室には、『始祖の祈祷書』が眠っておるのでな。
 聖地へと赴く際には、是非とも携えたいものだ。

 なに、心配することはない。
 この偉大なる使命のため、始祖ブリミルは余に大いなる力を授けたのだから」


 ぴくりと、フーケの眉が跳ねる。

 大いなる力、とはいったいなんだろうか?


 ……先ほど感じた『普通の男』という第一印象など、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ