第三部
古い凧歌
亡国なきくにからの便たより
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りを挙げた。
「余は、オリヴァー・クロムウェル。
貴族議会の投票により『聖邦復興同盟レコン・キスタ』総司令官を勤めさせていただいているよ」
男、クロムウェルは苦笑をその顔に抱いた。
「元はこの身なりの通り、一介の司教に過ぎぬのだが。
貴族議会に選ばれたからには、微力を尽くさねばならぬ。
微力の行使には、信用と権威が必要でね。
始祖に仕える聖職者の身でありながらも『余』などと自称することを、赦してくれ給えよ?」
「畏れながら、閣下は既にただの総司令官ではございません。今ではアルビオンの……」
「皇帝だ、子爵」
クロムウェルは、目の色を変えずに哄わらう。
まるで、二人の人間が重なっているような。
暖かい色と、冷たい色が同時にその場に存在しているような、不思議な眼だ。
「確かにトリステインとゲルマニアの同盟阻止は、余の願うところではある。
だが、それよりももっと大事なことがあるのだ。
なんだかわかるかね? 子爵」
「閣下の深いお考えは、凡人の私には量りかねます」
クロムウェルは両手を振り上げると、かっと眼を開いた。
「『結束』だ! 鉄の『結束』だ!
ハルケギニアは我々、選ばれた貴族たちによって結束し、聖地をあの忌まわしきエルフどもから取り返す!
それが始祖ブリミルより余に与えられた使命なのだ!」
双眸から暖かい色は消え、冷たい色が表に出る。
それでも、二人の人間がそこにいるような、奇妙な気配は残ったままだが。
「『結束』のために必要なものは、お互いの信用だ。
だから子爵、余はきみを信用する。
安心したまえ、同盟は結ばれてもかまわないのだ。
どのみちトリステインは裸でな。余の計画に変更はない」
そういうクロムウェルのま両眼まなこには、半分だけ暖かい色が戻ってきた。
「外交には二種類あってな。杖とパンだ。
とりあえずトリステインとゲルマニアにはパンをくれてやる。
こちらとしても、杖を振るうための精神力が必要だ」
「御意」
ワルドが深々と頭を下げる。
「トリステインは、なんとしてでも余の版図に加えねばならぬ。
あの王室には、『始祖の祈祷書』が眠っておるのでな。
聖地へと赴く際には、是非とも携えたいものだ。
なに、心配することはない。
この偉大なる使命のため、始祖ブリミルは余に大いなる力を授けたのだから」
ぴくりと、フーケの眉が跳ねる。
大いなる力、とはいったいなんだろうか?
……先ほど感じた『普通の男』という第一印象など、
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