第三部
古い凧歌
亡国なきくにからの便たより
[17/21]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
んなりと、罰をお与えください」
閣下と呼ばれた男は、にっ、と人懐こく笑うと、ワルドの肩を叩いた。
「何を言うんだ、子爵!
きみは目覚しい働きをした。敵将を一人で打ち倒すという、偉業を為したのだよ!
ほら、そこで眠っているのは、あの親愛なるウェールズ皇太子じゃないかね?
誇りたまえ、きみが倒したのだ!」
「……ありがとうございます」
「彼は随分と余を嫌っていたが……、こうしてみると不思議なものだ、奇妙な友情さえ感じるよ。
ああ、そうだった。死んでしまえば、誰もが『ともだち』だったな」
「ですが、閣下の望みの品、アンリエッタの恋文を手に入れる任務には失敗いたしました。
私は、閣下のご期待に沿うことが出来ませんでした」
ワルドが、再び謝罪を繰り返した。
「気にするな。同盟阻止より、確実にウェールズを仕留めることの方が大事だからな。
理想とは一歩ずつ、着実に進むことで達成されるものだ」
ローブの男が、フーケの方に振り向いた。
「子爵、そこの綺麗な女性を余に紹介してくれたまえ。
未だ僧籍に身を置くものとしては、女性に声を掛けづらくてね」
フーケは、この一連の会話の間、その男をそれとなく観察し続けていた。
ワルドが頭を下げている辺りを見る限り、この男は連盟レコン・キスタの中でもよほどの大物なのだろう。
だが、わからない。
フーケの目に映る男は、どうみても『普通の男』だった。
それが逆に怪しすぎるほどに、この男は普通だったのだ。
ワルドは立ち上がると、男にフーケを紹介した。
「彼女が、かつてトリステインの貴族たちを震え上がらせた盗賊、『土塊』のフーケにございます。閣下」
「おお、噂はかねがね存じておるよ!
我等が第二軍を勝利に導いた土人形ゴーレムの主、まずは此度の参戦に感謝を。
――お会いできて光栄だ、ミス・サウスゴータ」
そうしてフーケの昔の名を呼んだ男は、手を差し出して。
――目を合わせた。
なんだろうか、この何とも言えない感覚は。
眼に映る姿は、確かに本物なのに。
「……ワルドにわたしのその名を教えたのは、あなたなのね?」
何か、それとは違う、違和感がある。
「そうとも。余はアルビオンのすべての貴族を知っておる。
系譜。紋章。土地の所有権。
管区を預かる司教時代に、全て諳そらんじたよ。
おお、ご挨拶が遅れたね」
にこり、と細められる眼にあわせて、ぞくり、と肌の粟あわ立つ感触が腕を覆う。
男は胸に手を添えると、名乗
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ