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fate/vacant zero
第三部
古い凧歌
亡国なきくにからの便たより
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んなりと、罰をお与えください」


 閣下と呼ばれた男は、にっ、と人懐こく笑うと、ワルドの肩を叩いた。



「何を言うんだ、子爵!
 きみは目覚しい働きをした。敵将を一人で打ち倒すという、偉業を為したのだよ!
 ほら、そこで眠っているのは、あの親愛なるウェールズ皇太子じゃないかね?
 誇りたまえ、きみが倒したのだ!」


「……ありがとうございます」



「彼は随分と余を嫌っていたが……、こうしてみると不思議なものだ、奇妙な友情さえ感じるよ。
 ああ、そうだった。死んでしまえば、誰もが『ともだち』だったな」



「ですが、閣下の望みの品、アンリエッタの恋文を手に入れる任務には失敗いたしました。
 私は、閣下のご期待に沿うことが出来ませんでした」


 ワルドが、再び謝罪を繰り返した。



「気にするな。同盟阻止より、確実にウェールズを仕留めることの方が大事だからな。
 理想とは一歩ずつ、着実に進むことで達成されるものだ」


 ローブの男が、フーケの方に振り向いた。



「子爵、そこの綺麗な女性を余に紹介してくれたまえ。
 未だ僧籍に身を置くものとしては、女性に声を掛けづらくてね」


 フーケは、この一連の会話の間、その男をそれとなく観察し続けていた。

 ワルドが頭を下げている辺りを見る限り、この男は連盟レコン・キスタの中でもよほどの大物なのだろう。


 だが、わからない。


 フーケの目に映る男は、どうみても『普通の男』だった。

 それが逆に怪しすぎるほどに、この男は普通だったのだ。


 ワルドは立ち上がると、男にフーケを紹介した。



「彼女が、かつてトリステインの貴族たちを震え上がらせた盗賊、『土塊』のフーケにございます。閣下」

「おお、噂はかねがね存じておるよ!
 我等が第二軍を勝利に導いた土人形ゴーレムの主、まずは此度の参戦に感謝を。

 ――お会いできて光栄だ、ミス・サウスゴータ」


 そうしてフーケの昔の名を呼んだ男は、手を差し出して。


 ――目を合わせた。



 なんだろうか、この何とも言えない感覚は。

 眼に映る姿は、確かに本物なのに。


「……ワルドにわたしのその名を教えたのは、あなたなのね?」


 何か、それとは違う、違和感がある。



「そうとも。余はアルビオンのすべての貴族を知っておる。
 系譜。紋章。土地の所有権。
 管区を預かる司教時代に、全て諳そらんじたよ。

 おお、ご挨拶が遅れたね」


 にこり、と細められる眼にあわせて、ぞくり、と肌の粟あわ立つ感触が腕を覆う。

 男は胸に手を添えると、名乗
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