第四章
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「逮捕しました」
「親父も弟達も碌でもない奴だったが」
「あいつもだったな」
「もうこれで村にはいられないな」
「暫く刑務所暮らしになるし」
村人達はこの輩が捕まったことにかえってほっとした、実際にこの輩は村にいられなくなってだった。
家は引き払い刑務所に入ることになってから何処かに消えた、それで安心したのは鈴木家も同じで。
父は夕食の時に言った。
「これで小太郎もな」
「返せとか言われないよな」
「あいつは村にいられなくなったんだ」
それでとだ、父は息子である竜太郎に答えた。
「だからな」
「もうその心配はないな」
「そうだ」
「よかった、ずっと小太郎といられるのね」
娘の若菜は父の話を聞いて笑顔で言った。
「これからも」
「そうだ、小太郎はうちの犬としてな」
実際にとだ、父は娘にも答えた。
「ずっと一緒だぞ」
「そうなるのね」
「お前も散歩に安心して行けるからな」
「本当によかったわ」
「全く、碌でもない人だったよ」
妻は漬けものでご飯を食べつつ呆れた口調で言った。
「本当に」
「全くだな、何もかもがな」
「自分がいじめてた犬がコンテストで優勝したから返せとか」
「よく言えたものだ」
「恥知らずにも程があるよ」
「そんな奴だからだ」
夫は妻に言った。
「畑から野菜を盗んだんだ」
「そういうことだね」
「碌でもない奴は絶対に悪いことをして捕まるんだ」
そうなるとだ、夫はこうも言った。
「何時かな」
「全くだね」
妻は夫のその言葉に頷いた。
「つくづく思ったよ」
「そうだな、じゃあ若菜飯食ったらな」
父は今度は娘に声をかけた。
「小太郎の散歩行って来るな」
「そうしてくるね」
娘は父に笑顔で答えた。
「これから」
「ああ、夜道だから気をつけろよ」
「そうしてくるね」
「小太郎がいるから大丈夫だけれどな」
名犬である彼がとだ、父は笑顔で言った。そうして娘が犬の散歩に行くのを食後に見送ってそれから帰ると風呂に入れと言った。だが娘はその前に小太郎をブラッシングした。小太郎はそれを気持ちよさそうに受けた。
外道の言い掛かり 完
2020・4・29
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